年金と亡き夫がのこした資産で細々暮らしていた由美子さん(仮名)。しかし、久々に実家に顔を出した息子は、由美子さんの「異変」に気づきます。なんと、200万円あったはずの貯蓄残高がほとんどなくなっていたのです……いったいなにがあったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。※プライバシー配慮のため登場人物の情報は一部変更しています。
55歳長男「母さん、口座の200万円はどこに消えたの?」…年金月18万円の72歳女性が〈老後破産危機〉に陥ったまさかの理由【CFPの助言】
友坂さんの「その後」
「このままじゃ、母さんが本当に破綻してしまうかもしれない……」
自分の力ではどうにもできない無力感に押しつぶされそうになった和真さんは、母を連れて地元のファイナンシャルプランナー(FP)事務所を訪ねることにしました。
相談当日、和真さんと由美子さんは、これまでの経緯を1つひとつ丁寧にFPに説明。話を聞いたFPは、まずは友坂家の現在の家計状況を整理することにしました。
由美子さんの年金は月あたり18万円ほど。支出も同程度で、現時点では大きな赤字は出ていません。ただ、すでに貯蓄がほとんど残っていないことを踏まえると、家計を黒字にして少しずつでも貯蓄を回復させる必要があります。
FPは細かな支出項目を丁寧に確認しながら、次のように助言しました。
「もともと無駄の少ない生活をされていますが、細かいところを見直せば月1万円ほど改善できそうです。さらに、可能であれば無理のない範囲で仕事をし、給与収入を得ることも検討してみてはいかがでしょうか。月に数万円でも収入があれば、それをそのまま貯蓄に回すことができ、もしものときの備えになります」
由美子さんは少しずつ前向きに
その後、由美子さんは息子の助けを借りながら、少しずつ前向きに行動し始めました。
まず取り組んだのは、日々の家計の見直しです。FPが言うように無駄な支出はほとんどありませんでしたが、電気や水道の使い方、買い物のタイミングなどを工夫し、月に1万円の節約を実現しました。
さらに由美子さんは、年金生活に入ってから避けていた「働くこと」にも挑戦することにしました。体力に不安はあるものの、近所の工場で見つけた「お菓子の詰め合わせ作業」の仕事なら無理なく続けられそうだと感じたのです。
週に数日、短時間の勤務ではありますが、それでも月に3万円の収入が入るようになりました。家計の見直しと合わせて、毎月4万円を貯蓄に回せるようになったのです。
「少しずつだけれど、自分の力で暮らしを立て直していける気がします」
後日そう話してくれた由美子さんの表情には、これまでにはなかった明るさが戻ってきていました。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表