年金と亡き夫がのこした資産で細々暮らしていた由美子さん(仮名)。しかし、久々に実家に顔を出した息子は、由美子さんの「異変」に気づきます。なんと、200万円あったはずの貯蓄残高がほとんどなくなっていたのです……いったいなにがあったのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。※プライバシー配慮のため登場人物の情報は一部変更しています。
55歳長男「母さん、口座の200万円はどこに消えたの?」…年金月18万円の72歳女性が〈老後破産危機〉に陥ったまさかの理由【CFPの助言】
話を聞いた長男のリアクション
母・由美子さんが詐欺に遭い、200万円近くを失ったと知った和真さんは、思わず声を荒らげました。
「なんで相談してくれなかったんだよ!」
うなだれた母は、小さな声で言いました。
「だって……優しい声が若いころのお父さんに似ていたのよ……」
和真さんはなんとか母親を助けたいと考えたものの、住宅ローンや教育費の支払いが重く、自身の生活でいっぱいいっぱいです。心苦しいですが、母を支える余裕はありません。
怒りと焦り、そして無力感だけが2人を覆っていました。
高齢者を狙う「投資詐欺」が増えている
近年、「投資詐欺(詐欺的な投資勧誘)」による被害が後を絶ちません。特に高齢者が狙われるケースが多く、生活資金や老後資金を奪われる深刻な被害が増えています。
投資詐欺の特徴は、「元本保証」「必ず儲かる」「あなただけにご紹介」などといった、魅力的な文句で消費者の心理に入り込み、資金を振り込ませる点にあります。1度お金を支払ってしまうと、勧誘してきた事業者に連絡がつかなくなり、回収が極めて困難になるのが実態です。
国民生活センターの越境消費者センターによれば、2021年2月時点で、出会い系サイトなどをきっかけとした投資詐欺に関する相談が急増していることがわかります。
今回の友坂さんの事例の場合、早い段階で家族に相談していれば防げた可能性があります。知らない会社からの電話があったときは1人で判断せず、家族や信頼できる第三者に相談することが重要です。
こうした詐欺リスクへの備えとしては、以下のような対策が考えられます。
・「元本保証」はウソ。「高利回り」「限定情報」などの言葉も要注意のため即決しない
・お金を振り込む前に、家族や金融機関、消費生活センターに相談する
・普段から親子間で資産や生活状況について共有し、異変に気づきやすい環境を整える
詐欺の手口に引っかからないためには、「疑う力」と「相談する習慣」がカギとなります。大切な老後資金を守るために、身近な家族が日頃から見守り、声をかけ合うことがなによりの防衛策となるでしょう。
