しっかり「計画」を立てたのに…A夫婦が「破産危機」に陥ったワケ

A夫婦は自分たちの家計を把握し、老後に向けた退職金の使い道を決め、具体的な老後の資金計画も立てていました。

しかし、愛娘への資金援助は行き当たりばったりで、金額もそのときの気分で決定しており、この点は“痛恨のミス”といえます。危うく、本当に老後破産に陥ってしまうところでした。

こうなってしまったきっかけは、60歳の定年時に貯蓄が急に増え、家計に余裕ができたと思い込んでしまったことにあるでしょう。

また、さらにお金を育てようと考えたところまではよかったものの「65歳から年金を夫婦で月21万円受給するより、5年繰り下げて月30万円受給したほうが得だ」と、具体的なシミュレーションなしに決断してしまった点も好ましくない判断でした。

安心の老後を送るためのポイント

今回紹介したA夫婦の事例は決して特殊なケースではありません。退職金や遺産で突然貯蓄が増えた結果、気が大きくなってしまう人は一定数います。しかし当然ですが、年金受給までの「収入源」やそのための生活費がなければ誰しも「老後破産危機」に陥る可能性があるのです。

老後、お金で後悔しないためには、自分たちに起こりうるライフイベントをもとに、家計収支と貯蓄残高の推移を表すキャッシュフロー表を作ることをおすすめします。

このとき、無駄だと思わずに100歳まで作っておくといいでしょう。A家の場合、もし孫が誕生したら、その分のお小遣いや教育費の援助が必要になってくるかもしれません。

表ができたらこれに沿って、家計収支を客観的に検討する必要があります。A家の場合、退職金は生活資金として活用することを前提に、受給開始までの“空白期間”の生活費をどうやりくりするか、具体的に検討する必要があったでしょう。

シミュレーションの途中で貯蓄残高がなくなれば、それは実際に家計が破産する可能性があるという“警告”です。

なお、シミュレーションのあとも、作成した表は定期的に確認や見直しを行いましょう。必要ならば支出額を減らす、年金の繰下げ受給を止めるなりして、家計が破産しないように生活することが大切です。

牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員