社会保障制度が充実した今、「年をとっても人に頼らず、自立して一人で暮らすべき」と考える高齢者も多いでしょう。家族に迷惑をかけないようにと気を遣うことで、疎遠になることもあります。しかし、それが思わぬ事態につながることも。今回は、松井さん(仮名・81歳)の事例をもとに、高齢者が老後に家族とどのような関係性を築けばよいか、FPの三原由紀氏が解説します。
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年金月15万円・81歳母、「1日2食」の生活苦をひた隠し、古びた団地でひとり昏倒…「子どもには迷惑をかけられない」ぽつりと零した言葉に娘、号泣【FPの助言】
誰にも頼れない高齢者急増...「子への気遣い」が生む孤独と危機
綾子さんのように「子どもに迷惑をかけたくない」と思う高齢者は少なくありません。ダスキンが実施した「親のいま」に関する親子2世代の意識調査(2022年)でも、親世代の97.8%が「子どもの負担にはなりたくない」と回答しています。背景には、長男が家督を継いで同居し、高齢になった親の世話をするといった家制度の廃止や価値観の変化があります。
公的年金や介護保険などの社会保障制度の整備もあり、「老後は自分の責任」と考えている人が増えているのでしょう。しかし、「頼らない老後」には大きなリスクが潜んでいます。病気の発見が遅れたり、孤独や事故につながったりする危険があるのです。
綾子さんも「他にもっと困っている人がいる」と、民生委員の訪問を何度も断っていました。麻里さんも毎週電話をしてはいたものの、母の「元気よ」という言葉を信じ、本当の生活実態に気づけなかったと悔やみました。
内閣府の調査では、80歳以上の34.3%が「孤独を感じている」と回答。2024年、65歳以上の独居高齢者の自宅死亡者数は5万人を超えたことが警察庁より発表されています。