現役時代バリバリ働いていた会社員で、そこそこ高い役職についていた人ほど、定年退職後に注意したほうがいいことがあります。本記事では、法医学者の高木徹也氏による著書『こんなことで、死にたくなかった:法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部抜粋・編集して、その内容を詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
黒っぽい血を吐き、酒瓶に囲まれて死去の悲しい末路…定年退職後「アル中」になりやすい人の“意外な共通点”とは【ドラマ『ガリレオ』シリーズ監修の法医学者が解説】
自室で黒っぽい血液を吐いて亡くなった高齢男性…その原因は
高齢男性が、自室で黒っぽい血液を吐いて亡くなっているのが発見されました。
身体が黄色く、部屋に空になったお酒の容器がたくさんあれば、その状況だけで私たちは「アルコール性肝硬変にもとづく食道静脈瘤破裂」と判断します。
亡くなった人は「アルコール依存症」で、昼夜問わず飲酒していたのでしょう。こうして亡くなった人たちの部屋には、30年前は日本酒の瓶、25年前は日本酒の紙パック、20年前からは焼酎の大きなペットボトルに変わり、最近ではアルコール濃度の高いレモン割り缶チューハイが多く転がっているようです。
お酒に含まれるアルコール成分の多くは、肝臓で代謝されます。このとき、血管内の脂質もアルコールによって肝臓へと運ばれ、蓄積されて「脂肪肝」になります。溜まった脂肪組織は柔らかく壊れやすいので、肝臓はそれを補修しようと線維を増やして硬くなり、「肝硬変」となります。
すると肝臓を通る「門脈」という血管が通りづらくなって、血液が別の血管を迂回するようになるのです。
その迂回先の一つが「食道静脈」という血管。本来血液量が多くない血管に多量の血液が流れ、瘤を作り、それが破裂し吐血する……というのが、食道静脈瘤破裂の典型的な亡くなり方と言えます。