現役時代バリバリ働いていた会社員で、そこそこ高い役職についていた人ほど、定年退職後に注意したほうがいいことがあります。本記事では、法医学者の高木徹也氏による著書『こんなことで、死にたくなかった:法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部抜粋・編集して、その内容を詳しく解説します。
黒っぽい血を吐き、酒瓶に囲まれて死去の悲しい末路…定年退職後「アル中」になりやすい人の“意外な共通点”とは【ドラマ『ガリレオ』シリーズ監修の法医学者が解説】
現役時代にバリバリ働き、高い役職についていた人ほどご用心
解剖の経験上、高齢男性がこうして亡くなる背景には、比較的共通する点があります。現役時代バリバリ働く会社員で、そこそこ高い役職についていたケースが多いのです。
しかし定年退職後、それまでの功績も人脈もなくなったうえ、家庭では邪険にされるなど肩身の狭い思いをする人もいるようです。
さらに、もともとプライベートの友人や趣味が少ないとなると、寂しさをお酒で紛らわすようになる場合も少なくありません。
お酒を飲んで暴言を吐いたり、暴力を振るったりしようものなら、ますます家族や友人は離れていき、さらに飲酒がすすむ……。こうしてアルコール依存症になる人が多くいます。
もともとお酒に強いかどうかは関係なく、飲み続けることで耐性がついて依存性が高くなり、飲酒量が増えていくのです。
アルコール依存症に陥ると、毎日お酒を多量に飲み続けることで、脂肪肝や肝硬変以外にも「膵炎」「アルコール性心筋症」「ウェルニッケ脳症」などの病気を引き起こしやすくなります。
突然死の原因としては、肝硬変や食道静脈瘤破裂が代表的で、なかでも食道静脈瘤破裂は、周囲に黒い血液を吐いた状況が認められるのが特徴です。
お酒には一時的にイヤなことを忘れさせ、多幸感をもたらす精神的効能はあるかもしれません。しかし、多量飲酒は肝臓だけでなく、脳、心臓、膵臓など全身各所に悪影響を及ぼします。また、感情にも抑制が利かなくなることで、家族に迷惑をかけ、下手すれば警察沙汰になることも珍しくありません。
寂しさに負けないためにも、生涯続けられる仕事や趣味を見つけ、充実した第二の人生が送れるように、定年退職の前から計画を練っておくことも大切です。
【このような危険を避けるには……】
・定年退職後の人生設計を考える。
・酒量が増えたことによる症状があれば、早期に受診する。・そもそもお酒は、ほどほどにたしなむ。
高木徹也
法医学者