歳を重ねるにつれて怒りっぽくなる……。それには「老化」が影響しています。本記事では、法医学者の高木徹也氏による著書『こんなことで、死にたくなかった:法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部抜粋・編集して、感情的になって突然死してしまう高齢者のケースにり、高齢者に多い生活習慣病とその改善策について解説します。

急に怒鳴り散らす→死亡…「老害」「クレーマー」と揶揄されるような人は“突然死の危険性”が非常に高いワケ【ドラマ『ガリレオ』シリーズ監修の法医学者が解説】
高血圧が原因で怒りっぽくなる?
あなたの周りに、急に怒鳴ったり感情的になったりする高齢者はいませんか? 「老害」や「クレーマー」などと揶揄されることもあるかもしれませんが、このような態度をとっていると、突然死の危険性が非常に高まります。
以前、些細なことから怒鳴り散らした高齢者が心肺停止に至ったケースや、飲食店へのクレーム中にお年寄りが急死したケースを解剖した経験があります。これらの死亡は、高血圧に起因した疾患に由来していました。
年齢とともに血圧が上昇する最大の理由は、血管が硬くなるからです。同じ量の血液が流れる場合、血管が柔らかければ血液の圧をうまく逃がすことができますが、血管が硬くなると血管内の圧は相対的に高くなります。
このような状態を「動脈硬化症」といい、主に生活習慣に由来しています。特に脂質や塩分の多い食生活、喫煙などによって徐々に重症化するのです。
この「動脈硬化症」が問題なのは、無症状で進行するにもかかわらず、血液の通りが悪くなることで、二次的に心臓にも負荷がかかることです。血液が通りにくくなると、心臓はより多くの血液を送り出そうとして筋肉が厚くなり、「心肥大」という状態になります。その結果、血管内を通過する血液の摩擦は増え、血管の壁への負担が大きくなって動脈硬化症を増悪させます。
このように、「動脈硬化症」と「心肥大」が悪循環となって、高齢者の血圧は知らずしらずのうちに高くなっていき、心臓への負荷も大きくなっていくのです。
ちなみに、高血圧の治療として降圧薬が処方されることがありますが、これは高血圧によって生じる疾患の予防だけでなく、この悪循環を断ち切ることに一役買っています。ですから、降圧薬が処方された場合は、適切に服用することが重要です。