3.11からもう14年が経過しましたが、法医学者の高木徹也氏は、当時遺体の検案した際に、手荷物として多額の現金や貴重品を持ち運んでいた人がいたことに気づいたそうです。本記事では、高木氏による著書『こんなことで、死にたくなかった:法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部抜粋・編集して、未曾有の大地震を通して学ぶことのできる教訓について解説します。

現金1,000万円を持っていた高齢者のご遺体も…大地震発生時に死のリスクを高める「オオカミ少年」現象とは【ドラマ『ガリレオ』シリーズ監修の法医学者が解説】
地震で亡くなった人の持ち物に多額の現金や通帳、株券
2011年3月11日14時46分、宮城県沖で発生したマグニチュード9.0の大地震は、東北地方の太平洋沿岸に押し寄せる大津波を引き起こしました。この「東日本大震災」は、関連死を含め2万人を超える死者を出したのです。
当時、私は東京勤務でしたが、大きな揺れを感じて外に逃げ出すほど恐怖しました。無事を確認して職場に戻り、テレビをつけたところ、押し寄せる津波や燃えるコンビナートなどが映し出され、茫然としたのを覚えています。
地震発生からおよそ2時間後、警察庁から私の携帯電話に着信があり、「死者が相当出ると予想されます。検案が必要となりますが、派遣で向かうことはできますか」と問われました。
警察庁はすでにこの時点で、相当数の死亡者が出ることを察知していたのです。差し迫った業務もなかったので承諾し、3月13日に機動隊のバスに乗りこんで、私は宮城県へ赴くことになりました。
1週間の滞在中、予想をはるかに超える数のご遺体の検案を行ないました。多くは溺死と判断されましたが、実際には、圧迫や外傷、もともと持っていた病気の悪化、寒冷によるものなど、さまざまな要因が複合的に作用したものと考えられました。
また、多くのご遺体は身元不明だったので、顔や体格、歯など、身元を特定できる身体的所見のほか、着衣や持ち物などの確認も行なわれました。
持ち物を確認して驚いたのは、多額の現金や預金通帳、株券などの有価証券を、ポケットやポーチに入れていた高齢者が何人かいたことです。なかには、1,000万円近くの現金を持っていた人もいました。
突然発生した災害にもかかわらず、なぜ現金や貴重品を持っているのか不思議に思っていたところ、警察から「数日前から地震があったから、事前に準備していたんでしょう」と言われました。