抜歯した後のケアを怠ってはいけない

また、まれに「感染性心内膜炎」という疾患で、高齢者が突然死することがあります。これは、心臓の弁に細菌の塊が形成され、弁の働きが悪くなって心不全を起こし、重症の場合は死亡する可能性もある疾患です。

この場合、亡くなった方が1週間ほど前に、歯周病などで抜歯したというケースがよくあります。亡くなる3日前くらいから息切れやめまい、発熱や倦怠感などの症状が出ていたという話もよく聞きます。

こうした情報があれば、抜歯によって口の中の細菌が血流に乗り、心臓の弁に細菌の塊を形成させたと推察できるわけです。

私の経験では、抜歯に由来した発症者は中高年女性が多いです。もちろん、すべての「感染性心内膜炎」の原因が抜歯というわけではなく、必ずしも死に至る疾患ではありませんが、統計上、死亡する確率は4~20%と報告されています。

抜歯後は抗生剤を処方してもらうなど、適切な予防を心がけましょう。

【このような危険を避けるには……】

・日頃より適切な歯磨きを行ない、定期的に歯科検診を受ける。

・歯が抜けた場合には、義歯やインプラントを検討する。

・抜歯後に体調を崩したら、速やかに医療機関を受診する。

高木徹也
法医学者