年金繰下げ制度は、年金の受取時期を後ろ倒しにすることでその後の受給額を増額できるため、いわゆる“長生きリスク”への対策として注目されます。しかし、年金が増えるからといって安易な選択は禁物です。繰下げ受給の決断を後悔している60代夫婦の事例をもとに、“年金ルールの落とし穴”をみていきましょう。牧野FP事務所合同会社の牧野寿和CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
悔しい…年金繰下げで「月29万円」見込む60代夫婦、余裕の老後だったはずが〈年金ルール〉知らず“まさかの年金減額”に悲鳴「繰下げなんてしなきゃよかった」【CFPの助言】
繰下げ受給は何歳から得?年金受給の「損益分岐点」は…
年金受給を繰り下げた場合の損益分岐点は、受給開始後、約12年経ってからと言われています。ただし、受給額の増額に伴って社会保険料と税金も増えることが懸念されます。
年金の繰下げと生活費の確保は相関関係にある
A夫婦の場合、十分な貯蓄に加えて駐車場収入もあったことから、抵抗なく年金の繰下げを選択していました。
しかし、年金の繰下げ受給を行う場合、繰り下げた場合の影響を含めたシミュレーションをできるだけ正確に行わなければ、その“恩恵”を受けることは難しいといえます。
「銀行の人が勧めているからと安易に選択したけれど、もっと自分たちでよく調べておくべきでした。とはいえ、自分たちの年金だけで暮らしていけそうでひと安心です。散財には注意しながら慎ましく生きていきます」
そういって夫婦で顔を見合わせ、決意を固めたようにうなずいたのでした。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員