丸亀製麺を展開する株式会社トリドールホールディングスは、2024年3月期の売上高2,026億7,200万円(前期比18.5%増)と発表しています。物価高騰のなか値上げを余儀なくされても、売上高増の理由の一つは、国内外約840店舗の入口に設置されたすごい機械――店舗製麺機にあります。チェーン店とは思えないほどのこだわりが詰まっているのです。東山広樹氏の著書『国民的チェーンめし研究 〇〇の△△はなぜうまいのか?』(カンゼン)より、客足が衰えない丸亀製麺の魅力を紐解きます。
インドネシア店にも…国内外問わず〈丸亀製麺〉の店舗入口に設置された“すごい機械”の正体「値上げしても620円でこのクオリティは感動」
『丸亀製麺』の“麺”はなぜうまいのか?
『丸亀製麺』の麺の美味しさは香川のうどんの美味しさをかなり再現している。その美味しいポイントを言語化すると、
・コシがしっかりある
・麺の表面の滑らかさ
・口溶けの良さ
・喉越しの良さ
・麺自体の甘さ
・フワフワしているけれど歯を立てると、麺の中心がぷつんと心地よく切れる
という6点が挙げられる。チェーン店でこのクオリティを提供できているのは奇跡に近いと思う。
『丸亀製麺』に行くと、入口に製麺機と麺の茹で釜が設置されているが、これはインドネシアなどの日本以外の国にある店舗でも同じであった。正直、これだけ大きな企業だから、麺はセントラルキッチンで打って、各店舗に配送するほうが絶対的にコストダウンができるし、定石である。しかし、あえてそれをせず、店舗製麺にこだわり続けている情熱がすごすぎる。それはまさに“うどんは生き物である”と捉えている証しで、うどんへの飽くなき情熱を感じる。
『丸亀製麺』の「明太釜玉うどん」は食感の宝庫
さて、麺の素晴らしさだけで話が終わってしまいそうだが、僕の『丸亀製麺』での推しメニューを紹介させていただきたい。これだけ麺がうまい&茹で立てを提供してくれるという2点から、『丸亀製麺』では“釜玉系”を推したい。そして、「明太釜玉うどん」。こんなの最強すぎる、ってくらい美味しい。
まず釜玉自体、すごく良くできた料理で、うどんというのは麺が太いから他の麺料理に比べて蓄熱性が高い。その蓄熱で生卵を絡めることで、卵は熱変性を起こし、トロッと滑らかな食感へと変化し麺によく絡むようになる。
そのマイルドなソースに明太子の塩気&辛みがビシッと良いアクセントを与える。さらに明太子自体が魚介のうま味が凝縮された食材なので、うどん全体のうま味が増して、食べ応えが激増! そこに揚げ立ての天ぷらだ。ツルツル滑らかな麺に、トロトロの卵が絡む、“やわらかい食感”が圧倒的に主体な世界に突如現れたカリカリ&ガリガリな“ハード食感”が投入されるカタルシス!
この世のすべての食感が一杯の丼の中に存在しているのでは? なんて錯覚を引き起こすほどの食感バラエティ! 最後は丼の底に残った明太子混じりの卵液にだしを注いで飲んでフィニッシュ。
こんな素晴らしい食体験を1,000円未満で提供している『丸亀製麺』はマジですごい。
注:並620円、大800円、得920円(うどん・玉子・明太子がすべて並の2倍量)2025年3月時点。
東山 広樹
株式会社マジでうまい
代表取締役
蒼井 すばる
イラストレーター