2024年7月期、鳥貴族の売上高は419億円、営業利益は32億円と過去最高益を更新。さらに、5月には全品370円(税込)への値上げを実施したものの、客足は衰えることなく好調を維持しています。リーズナブルな価格と豊富なメニューに支えられ、全国で約620店舗を展開する鳥貴族ですが、その成功の裏には、他の焼き鳥チェーンとは一線を画す“こだわり”が隠されているようです。チェーン店の合理化が進むなか、鳥貴族があえて貫き続ける「焼き鳥のルール」とは? 東山広樹氏の著書『国民的チェーンめし研究 〇〇の△△はなぜうまいのか?』(カンゼン)より、その秘密を紐解いていきます。
異論は大いに認める…370円均一〈鳥貴族〉で最も推せる「メニュー名」、国民的チェーンめしの脳天直撃的うまさの理由
『鳥貴族』はなぜうまいのか?
絶対に生肉から焼く――。これこそが“安さ”と“美味しさ”を両立する『鳥貴族』の強みのひとつだろう。火入れの難しい鶏肉をジューシーに仕立て上げるワザを、科学的エビデンスを用いながら著者が解説する。
『鳥貴族』との出会いとは?
社会人になり、飲み会の頻度が激増した頃、『鳥貴族』はまさに救世主だった。僕は昔から美味しいものが大好きなので、安くても美味しくない居酒屋に行くことには抵抗があったが、『鳥貴族』は“安さ”と“美味しさ”を完璧に両立しているすごい居酒屋として、数え切れないくらい行った。
イラスト:蒼井すばる
何を食べても美味しいけれど、やはりメイン商品である焼き鳥の美味しさがとにかくすごい。当たり前のように語っているが「焼き鳥が美味しいチェーン居酒屋」というのは、本当にものすごいことなのである。僕は肉の焼き方の研究を続けてきたけれど、焼き鳥は肉の火入れの中でも最高難易度を誇る。だからこそ、『鳥貴族』では焼き鳥をたくさん食べていただきたい!
(とはいえ「山芋の鉄板焼」も鬼のようにうまいから、本当に困る……)
『鳥貴族』の焼き鳥はなぜうまいのか?
『鳥貴族』はどの店舗も忙しく、スタッフたちも日本人のみならずさまざまな国籍の方が働いているけれど、絶対に生肉からちゃんと焼くのだ。だからうまい。
正直、あれだけ大きくチェーン展開するなら、あらかじめ蒸した肉を串に刺して冷凍してから店舗で焼く、のが一般的だと思う。なんてったって、鶏肉の火入れは難しい。生焼けになりやすいし、生焼けじゃダメだし、中にしっかり火が通る頃にはパサパサになっていたり、表面が焦げてしまう、という事態に陥りやすい。
昔から焼き鳥を美味しく焼くには、職人が長年かけて培ってきた経験やスキルが必要だとされている。でも、そりゃあ生肉から焼いて、焼き立てを食べるのがうまいに決まっている。『鳥貴族』はチェーン的な合理性を捨てて、“美味しさ”に全振りしている姿勢がマジですごい。
「鳥貴族の焼き鳥、何が一番好き?」なんて話題は、あっという間に2~3時間が溶けてしまうほどに盛り上がる話題だけれど、僕はやはり「貴族焼」を推したい。異論は大いに認める。
東山 広樹
株式会社マジでうまい
代表取締役
蒼井 すばる
イラストレーター
