40歳前後で住宅購入に踏み切る世帯が多いものの、事情により50歳前後など遅れて住宅購入を考えるケースもあるでしょう。年齢と共に収入が増えることから高額のローン返済が可能だと考える人もいるかもしれませんが、短い期間の住宅ローンを完済しきるには慎重な計画が欠かせません。今回は、マイホーム購入後に思わぬ危機に直面した田中さんの事例をもとに、遅めに住宅購入をする際のリスクと失敗した場合のリカバリーについて、CFPの松田聡子氏が解説します。
年収700万円・49歳会社員、満を持して5,000万円の新築マンション購入。“終の棲家”を手に入れたはずが…わずか7年で〈賃貸暮らしに逆戻り〉となった「まさかのワケ」【CFPの助言】
FPが伝える「遅くに家を買う」際の注意点と賃貸に戻ったあとの対策
50歳前後で住宅を購入する場合、どのような点に注意すべきでしょうか。田中さんの経験から学び、ファイナンシャルプランナーとして3つの重要なポイントをお伝えします。
第一に、役職定年後の収入減を具体的に会社に確認することが不可欠です。「役職定年制度がある」という漠然とした認識ではなく、実際の収入がどの程度減少するのか、会社の人事担当部署に相談すべきです。そのうえで、最も収入が下がった場合を想定して返済シミュレーションをしましょう。
第二に、退職金の見込み額を確認し、繰上返済計画を検証することです。会社の退職金規定をチェックし、役職定年後の退職金がどの程度になるか把握しましょう。繰上返済後に老後資金が手元に残らないような無理な計画は避けたいところです。
第三に、60歳時の残債を1,000万円以下にするようにしましょう。仮になにかあった場合でも、退職金の一部で対応できる金額に抑えておくと、老後の家計破綻リスクを軽減できます。
では、田中さんのように賃貸に戻ったあとはどのように再出発すればよいのでしょうか。
まず、適正な家賃水準を見極める必要があります。手取り収入の20〜25%を目安に設定し、家計に過度な負担をかけないようにします。田中さんの場合、世帯の月収の手取りが約40万円とすると、8~10万円程度が適正な家賃といえるでしょう。
次に、マンション売却で得た資金の有効活用です。田中さんの場合、1,800万円の手元資金を全額貯金にするのではなく、分散投資を検討したほうがよいでしょう。NISA制度を活用して比較的リスクの少ない資産に投資しておくと、老後に向けて成長を期待できます。元本割れが心配な場合、変動10年の個人向け国債も選択肢となるでしょう。
最後に、将来的な住宅計画についてです。田中さんが働いて収入のあるうちは、さらに貯蓄を進めていきましょう。
そのうえで、ずっと賃貸住宅で生活するか、住宅ローンを組まないで購入できる中古マンションなどを取得するかといった、老後の住宅について計画を立て直します。ご夫婦でよく話し合い、希望する老後生活が送れるように協力していきましょう。
松田聡子
CFP®