国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者のわずか5.5%しかいないとされる「年収1,000万円プレイヤー」。多くのビジネスマンにとって、「年収1,000万円」というのは憧れの数字です。高級車を乗り回し、豪邸に住み、さぞかし豪遊しているのだろう……と思いきや、高収入ならではの“落とし穴”があると、ファイナンシャルプランナーの愛染興希氏はいいます。40代サラリーマンの事例をもとに、本記事で詳しくみていきましょう。
日本の上位5%がこのレベルだと!?…年収700万円の43歳サラリーマン、ヘッドハンティングで「年収1,000万円台」到達に歓喜→給与明細を“思わず二度見した”ワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

給与明細を思わず二度見…“衝撃の手取り額”

佐藤さんの転職先は年俸制であり、ボーナスはありません。手取り額は約59万円……。年収に換算すると“700万円ちょっと”しか受け取れない計算です。

 

なにかの間違いでは……? そう思い、明細を改めて確認すると、多額の税金が引かれていました。前職の頃よりも控除額が増え、手元に残るお金が少なくなっています。

 

「年収1,050万円って、手取りだとこんなもんなのかよ……!」

 

さらに追い打ちをかけるように、ロレックス、オーダーメイドスーツ、家族との外食代……先月クレジットカードで“豪遊”した分の請求が次々とやってきます。

 

「ヤバい、このままじゃ貯金が減るどころか、むしろマイナスだ。嫁になんて言おう……」

 

佐藤さんはここでようやく、“年収1,000万円”の落とし穴に気がいたのでした。

“うぬぼれ”はNG…年収1,000万円の落とし穴

佐藤さんの年収はたしかに増えました。にもかかわらず、なぜ手取りは増えないのでしょうか。 その理由は、日本の税制にあります。

 

日本は「累進課税制度」を採用しており、収入が増えるほど税率が上がるしくみです。年収1,050万円の佐藤さんは、基礎控除48万円と扶養控除38万円を考慮した749万円が課税対象となります。695万円以上899.9万円以下の所得税率は23%(住民税と合わせると33%)です。

 

また、社会保険料の負担も見逃せません。厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などは軒並み収入に応じて増加し、年収1,000万円の場合、税金+社会保険料で約300万円〜350万円が差し引かれる計算となります。

 

したがって、額面が年収1,050万円であっても、結果として手取り額は700万円ほどにしかならないのです。

 

しかし、やっかいなのが「給料が増えたのだから、いいものを買おう」という“油断”です。収入の増加に比例して支出が増えてしまうことを、「ライフスタイル・インフレーション」と呼びます。

 

「給料が増えたんだから、時計でも買うか」

「給料が増えたんだから、車でも買い替えるか」

 

こうして支出が右肩上がりに増えていくと、結果的に貯蓄まで減ってしまうという本末転倒な事態を引き起こしてしまうのです。

 

実際、「年収1,000万円でも貯蓄ゼロ」という家庭も珍しくなく、金融広報中央委員会が2022年に行った調査によると、年収1,000万円以上の世帯でも約22%が「貯蓄ゼロ」と回答しています。