がんは早期発見によりリスクが軽減できるという概念が浸透し、国も定期的ながん検診受診を推奨しているため、以前と比べて「がん検診は身近なものになった」と感じる人もいるのではないでしょうか。ところが、がん検診の際に「要精密検査」と言われた場合の精密検査の受診率は決して高いとは言えません。本稿では、ニッセイ基礎研究所の村松容子氏ががん検診に関する調査を分析し、現状・課題について詳しく解説します。
がん検診で「要精密検査」でも受診しない理由 (写真はイメージです/PIXTA)

フォローアップのタイミングと方法

がん検診は国も推奨するところであるが、時間や経済的な負担を嫌がったり、がん検診の必要性を認識していないことから、受診率が伸び悩んでいることが知られている。しかし、今回見てきたとおり、がん検診を受けたとしても、精密検査を勧められた場合に、すぐに精密検査を受けるとは限らず、自分自身の健康状態に自信を持っていたり、がんが見つかる不安から躊躇する様子がうかがえた。

 

一方、実際に、「要精密検査」の判定を受けた人においては、今回の調査で95%程度が精密検査を受けており、仮に要精密検査だった場合の精検受診意向と比べると、精検を受けている可能性があった。
 

現在、国が推奨するがん検診は、スクリーニング検査であり、無症状の人を対象に、がんの疑いがある人を発見するものである。すなわち、がん検診を受けるときは、多くの人が、自分ががんである可能性を意識せずに受けており、要精密検査の判定を受けた場合についてまで想像が及んでいないと考えられる。
 

がん検診を推奨するときには、検査結果がいつごろ返ってきて、要精密検査の判定が出る割合はどの程度で、その場合はいつ頃、どうしたらいいのかについても周知しておくことで、必要があればスムーズに精密検査に進めるよう環境を整えていくことが重要だろう。