奨学金利用時の注意点

ただし、貸与型奨学金の場合、それが「借金」であることを忘れてはなりません。

たとえば、有利子の奨学金を月8万円で4年間受給するということは、総額384万円+利息を抱えて新社会人になるということです。社会人になってから数十年にわたって返済し続けることにもなりかねず、その後の人生設計に影響を与えることになってしまいます。安易に奨学金を利用することは避けたほうがいいでしょう。

この点JASSOでは、企業が奨学金を借りた人に代わって代理で返還する「企業等の奨学金返還支援制度」を令和3(2021)年に設けました。令和6(2024)年10月末時点で、全国2,587社が利用しています。

また、東京都でも「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」として、従業員の奨学金を代理返還する制度があり、奨学金を借りた人物の負担を減らすこうした制度も広がりつつあります。

A夫婦はこうした公的な教育費支援・減免制度を知り、漠然としていた不安が少し落ち着いたように思えました。自分たち夫婦が節約していることを、大々的に子どもたちに伝えているわけではありません。しかし、子どもたちはA家が決して裕福ではないことをわかっていて、気を遣っている様子がうかがえます。

「3人の子どもたち全員が、行きたい学校に通えますように」

今日も職場にお弁当と水筒を持参しながら、A夫婦は思いを新たにしました。

石川 亜希子

AFP