現在、日本の大学進学率は約57.7%で過去最高となるなか、なんらかの奨学金を利用している大学生の割合は約55.0%と、こちらも過去最高となっています(文部科学省「令和5年度学校基本統計」より)。そこで今回、具体的な事例を通じて、教育費の工面に苦労する家庭を救う“救済制度”をみていきましょう。2人の子どもを私立中学に通わせる石川亜希子AFPが解説します。
手取り月48万円も、職場には毎日お弁当と水筒を持参…3人の子をもつ40代共働き夫婦、もうすぐ始まる“日本の救済制度”に「手をあわせて拝みたい」【FPが解説】
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2.「高等教育の修学支援新制度」の拡充
もう1つは、令和7(2025)年度から始まる多子世帯に対する大学等の無償化制度です。扶養する子どもが3人以上の多子世帯において、国が定めた一定額(授業料70万円、入学金26万円)まで、大学等の授業料・入学金が減額・免除されることになります。いままでの制度には所得制限や資産条件等がありましたが、こうした制限も撤廃されます。
子どもを3人同時に扶養している期間のみの支給にはなりますが、AさんとBさんは、数年後に大学受験を控える長女の希望の進路を叶えることができそうだと、新制度に手をあわせて拝みたい気持ちでした。
まだ決定ではないものの…「高校無償化」にも新たな動きが
では、高校の授業料支援についてはどうでしょうか。東京都や大阪府では、所得制限なしの高校授業料無償化制度が話題となりました。しかし、Aさんの住む県にはまだそのような制度はありません。所得制限もあり、国の高等学校等就学支援金の制度のみで年間11万8,800円の支給となっています。
ただ、高校生がいる世帯への就学支援金制度については、令和7(2025)年2月5日に国が下記の方向で議論しているとのニュースが世間を騒がせました。
・令和7年4月から、公立・私立を問わず、所得制限を設けずに一律で年間11万8,800円を支給することで、公立高校の授業料を実質的に無償化する
・私立高校を対象とする加算についても、来年4月から所得制限を撤廃する
現在公立の中学に通う13歳の長男は、小学生のころからサッカーを続けています。A夫婦は家計状況を鑑みて公立高校に進学してほしいと考えていましたが、もし上記の制度が実現すれば、設備や環境の整った私立高校への進学も視野に入ってきます。
まだ確定していない制度に期待して進学を決めることはできませんが、Aさんは今後も報道を見守るつもりです。
「それでも足りない」家庭のための救済策と利用時の注意点
国や県から支給される給付金などを利用しても進学費用が足りない場合は「奨学金を活用する」という選択肢が考えられます。
日本学生支援機構(以下、JASSO)の奨学金は、大きく分けて「給付型奨学金」と「貸与型奨学金」の2種類です。
給付型奨学金は返済不要のため経済的負担がないというメリットがあります。しかしそのため、成績や家計の基準が厳しく、競争率も高くなります。
一方、貸与型奨学金は、その名のとおり返済義務がある奨学金です。JASSOの貸与型奨学金は、利子の有無によって第一種(無利子)と第二種(有利子)に分かれます。第一種は、成績や家計に基準が設けられています。第二種は第一種よりも緩やかな基準となり比較的借りやすいものの、利息が発生するため、返済総額が大きくなります。
またJASSO以外にも、在籍している高校や大学、もしくは住んでいる自治体や民間の財団が奨学金制度を設けている場合があります。
