一時は節税効果や利回りの高さにスポットが当たって人気を博した海外不動産への投資だが、近年は別の角度からも熱い視線が注がれている。そんななか、大東建託が新たな試みに挑戦している。これまでの建物賃貸事業で培った大東建託のノウハウを生かし、カリフォルニアの築古物件を「リノベーション」によって価値を高める取り組みだ。今年2月に竣工したばかりの同社が手掛けたカリフォルニアの不動産事業について、大東建託グローバル不動産開発部次長の田邉浩久さんに話を聞いた。

取引の透明性や制度の整備状況など、米国不動産が最も堅実

もっとも、一口に海外不動産といっても、国・地域によって特性や法律・制度、取引の慣習などが異なっており、魅力や注意点にも違いが見られる。なぜ、大東建託は海外展開の第一歩として米国をターゲットに定めたのか。

 

「日本国内と比べて海外の不動産は情報を入手しづらいのが難点ですし、国や地域によっては制度がきちんと整備されておらず、実際に購入してみると当初の見込みとは大違いで失敗したという声もよく耳にします。その点、先進国の中でも特に米国の不動産は取引市場の透明性が高く、制度も行き届いています。また言語面においても情報を理解しやすいのがメリットです。そこで、失敗するリスクが低く、お客様に比較的安心して投資していただける米国を海外展開における足がかりと位置づけました」(田邉さん)

 

とかく日本では新築や築浅の物件に人気が集中しがちだが、むしろ米国では万全のメンテナンスが施された歴史的な物件が好まれる傾向がある。

 

「アメリカは築50年、築100年といった長い歳月を経た木造の建物であっても、しっかりとメンテナンスを行って維持していくという文化が形成されています。したがって、築年数の経過が物件価値の下落に直結することはないのですが、適切なメンテナンスが求められ、状況に応じて大規模修繕工事を実施する必要も生じます。たとえ現地で生まれ住んでいても、一般の方々がそういったことを判断するのは難しいものでしょう。当社グループは長く国内で培ってきた知見やノウハウをもとに、プロ目線でメンテナンスやリフォーム、リノベーションを展開できるのが大きな強みです」(田邉さん)

 

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取材・文/大西洋平 撮影/尾崎三朗(人物)
※本インタビューは、2025年2月17日に収録したものです。