介護施設へのイメージは、どうしてもネガティブに捉えられがちです。しかし実際には心温まる瞬間や、活き活きとした日常がたくさん詰まっています。高齢者が安心して過ごせる場所としての一面を持ちながら、スタッフや利用者同士の絆が生まれる、まるで第二の家のような空間です。本記事では75歳の介護老人施設長・川村隆枝氏の著書『亡くなった人が教えてくれること 残された人は、いかにして生きるべきか』より一部抜粋・再編集し、100歳越えの2人のおばあちゃんの事例を通して、いくつになっても魅力的な人の秘訣に迫ります。
老人ホームに入所する100歳のおばあちゃんの「好きな人」に施設全員、拍手喝采のワケ【介護老人施設長が解説】
若さの秘訣
高齢期には、こんな考えをする人がいます。
・70歳を過ぎたら当たり前だったことを「やめる」
・大切にしていたものを「捨てる」
・そして過去への執着から「離れる」
・まわりに迷惑をかけないよう、静かにゆっくりと人生を過ごせばいい
そんな消極的な考えはとんでもない! これからまだまだやれることがあり、楽しいこともいっぱいあります。
誰かがいいました。「60代になると少し体がだるくなる」「70代になると今まで普通にできたことがかなり辛くなってくる」と。確かに70代になってから、体の衰えを感じます。みんなは私のことを「外見は若く見える」といいますが、実際は私だって若いころに比べたら体力も持久力も低下していると感じます。
でも、孤独、さみしさ、悲しさを味わった今だからこそできることもあると思います。若いころと比べればもちろんできないことも増えるでしょう。でも、年を重ねてさまざまな経験を経るほど、思いやりや、気配りなど、相手の立場になって考えることもできるようになってきました。
もっと自分に磨きをかけて魅力的な大人になりたいと思っています。
103歳の可愛い「おばあちゃん」
最近、103歳の可愛い「おばあちゃん」にも、ホッとさせてもらったいい話がありました。可愛いですといっては失礼なら愛すべき人というべきでしょうか。Aさんは認知症があり、廃用症候群で歩けなく、入所されていました。
ある日車椅子に座って手のひらに大事そうに“ひよこ”の人形を載せてなにやら、にこやかにお話をしていました。看護師が「このひよこの名前はなんていうの?」と聞くと彼女は「ようこ」と答えて優しく、可愛がっていたとのこと。その姿がなんとも愛らしく、後日その話を娘さんにすると「ようこは私の名前です」と。認知症になっても愛娘のことをいつも思っていたのですね。胸が熱くなる、いい話です。
川村 隆枝
医師・エッセイスト