介護施設にはネガティブなイメージを抱く人が多いかもしれません。しかし、実際には全く異なります。リハビリテーションを取り入れた施設は、利用者の生活の質を向上させ、元気に自立した生活をサポートする場。本記事では川村隆枝氏の著書『亡くなった人が教えてくれること 残された人は、いかにして生きるべきか』より一部抜粋・再編集し、Tさん(79歳)の事例を通して高齢期に他者と交流をもつことの重要性を解説します。

この人はおわったな…活発な79歳父がコロナ禍で車椅子生活→要介護4。意識もドロドロ、家族もわからず、諦めた息子に母が飛ばした「強烈な檄」【介護老人施設長が解説】
介護施設は暗くて死を待つ場所ではない
皆様、「介護施設」を利用するというと、どうしてもネガティブなイメージをおもちになる方も多いかと思います。暗い・死を待つばかりの場所……もしかしたらそんなイメージをおもちかもしれませんが、そんなことは全くありません。むしろ、安心して入れる楽園のような場所だと思っています。私の勤務する老健たきざわでは、通所リハビリテーションの部署があり、「ちょっといい話」であふれています。最近あったちょっといい話をご紹介していきたいと思います。
元気だったお爺さんが介護度4状態に…
79歳のTさんは元気で活動的なお爺さん。そんなTさんが、某病院で人工膝関節の手術を受けました。当時は新型コロナウイルス感染症が真っ盛りで退院の許可が出ず、3ヵ月間の入院となりました。家族との面会もできず、ほとんどベッド上で過ごしたTさんは、コロナ感染のためリハビリテーションもままならず、筋肉も衰え足腰も弱くなり歩けなくなって車椅子生活となりました。
会話や刺激も少ないことから軽い認知症に陥り息子の判別もできなくなってしまいました。3ヵ月後リハビリテーションを目的に慢性期医療の病院に移ったときは動きが活発で問題行動も多かったため、けがをしないように拘束され、それが原因だったのか認知症はますますひどくなり、認知症の薬の増量で意識もドロドロになってしまい、息子の判別もできなくなってしまいました(妻のことは分かっていたようです)。
病院でのリハビリテーション終了後、家族が迎えに行ったときはまるで別人で“この人はおわったな”という印象だったそうです。帰宅するにあたって、自宅にするか介護施設に移るか家族会議をしました。
自宅では見られないといい張る長男を妻が一喝。
「あんたたちのためにお父さんがどんなに働いてきたか!」