(※画像はイメージです/PIXTA)
子の将来を決める親
ある私立小学校の入学試験で、必死になっているお母さんたちの姿を見たことがあります。中には「これだけ受験にお金を使ったのに、落ちたのは自分のせいだ」と言って泣き崩れている方もいました。母親の自分がちゃんと勉強させなかったからだ、と。
私はその光景を見て、人生の主役が入れ替わってしまっているような気がしました。子どもには子どもの人生があるのに、親が子どもの主体性を奪ってしまっていると。親が子どもの主体性を奪ってしまうと、子どもは自分で考えて、自分の人生を選ぶことができなくなります。
以前、出会ったあるお母さんは、自分には稼ぐ力がなくて、稼ぐ夫に意見が言えないから、自分の娘には絶対に経済力のある仕事に就かせたいし、できれば医者にしたいと言っていました。そのとき、お子さんはまだ幼稚園児でした。
たしかに女性が経済的に自立して生きていくことは大事なことですが、母親の価値観を幼い子どもに押しつけるのは危険です。どんな職業でも、なれたからといって、その後の人生がうまくいくとはかぎりません。医師になってからも苦労する人もいれば、中にはやめる人もいます。実際、医学部在学中に自殺をする学生もいます。
自分で考えて、自分の足で生きていくという感覚がなかったら、どんな職業に就いても精神的につぶれてしまうことがあるのです。大事なのは、子ども自身が自分の人生を選びとっていくことではないでしょうか。
自分の人生の山を、自分の足で歩く
私の母は、よく子どもたちに「お母さんの言うとおりにしておけばまちがいない」と言っていました。私自身、小さいころはそうだと思っていたし、そう言われて安心もしたものでした。自分でどうしたらいいかをいちいち考えなくてもいいし、失敗したら親のせいにもできます。
でも大学生になってから、「私はこれまで、母の人生の山を登ってきたんだな」と思うようになりました。自分の人生の山を登ってこなかったことに気づいたのです。成人してからも「自分ってなんのために生きているんだろう」とか、「私なんて、もう消えてしまってもいいんじゃないか」などと苦しむことがときどきありました。