「I(アイ)メッセージ」を使ったコミュニケーションは、子どもの自主性を育み、将来の経済的自立を促すうえで重要な役割を果たします。一方的に指示するのではなく、自分の気持ちを伝え、子ども自身の判断を尊重することで、問題解決能力や創造性を育むことができます。これらの能力は、変化の激しい現代社会において、困難に立ち向かうための重要な要素となるでしょう。精神科医であるさわ氏の著書『児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)より、詳しくみていきます。
死ぬかもしれなくてもやめられなかった…アルコール依存症の患者を救う「医師の言葉」 (※画像はイメージです/PIXTA)

相手の行動を変えたいときに効果的な伝え方「I(アイ)メッセージ」

相手の行動を変えたいときは、「I(アイ)メッセージ」で伝えると効果的です。「I(アイ)メッセージ」というのは、「私はお皿を洗いたいから、こっちまで食器を持って来てくれると、うれしいな」というように、「それをしたら、私はこう感じる」と「私」を主語にして自分の思いや主張を伝えるコミュニケーションの方法です。そして、それ以上は強要しません。こちらの気持ちを伝えたら、やるか、やらないかは相手に決めてもらうことが大事です。

 

ちなみに、この「I(アイ)メッセージ」は、アルコール依存症の治療でも使われる方法です。私はアルコール依存症の病棟で診察を行っていた時期がありました。アルコール依存症の場合、とにかくお酒を断ってもらわないといけないわけですが、「お酒を飲むのは体に悪いから、飲むのをやめましょう」と正論を説いても、患者さんはだれもお酒をやめてくれません。「飲むのをやめましょう」という表現だと、「あなた」を主語にしているので、相手は命令されているように感じてしまうのですよね。

 

小さいころ、親から「宿題しなさい」と言われて、いやな感情になったことはありませんか? やろうと思っていたのに親から言われると、めちゃくちゃ腹が立ちませんでしたか? それと同じです。ですから、アルコール依存症の患者さんには、「私はあなたの体が心配だから、お酒の量を減らしてくれるとうれしいな」というように自分の思いを伝えるほうが、相手が行動を変えてくれる可能性が高くなります。

 

こちらがいくら怒ったり、責めたりしたところで、人の行動は決して変わらないというのが、依存症の患者さんの治療を通して私が学んだことです。とくにアルコール依存症の患者さんは、自分が責められていると感じると、診察室に来なくなってしまいます。

 

そのまま放っておくと、アルコールによって命を落としてしまうこともありますから、とにかく診察室に気分よく通い続けてもらうことが何よりも治療として大切なのです。そして、それは相手が子どもの場合でも同じだと思うのです。