「絵本のような風景」と形容されるイギリスの街並み。古い建物を大切に受け継ぎ、自分好みの空間を作り上げる彼らの暮らしは、イギリス人の文化の表れです。本連載では、イメージコンサルタント・テート小畠利子氏の著書『英国流 「自分に似合う」住まいの作り方:1人の時間も、みんなとの時間も、豊かで楽しい』(大和出版)より一部を抜粋・再編集し、英国流の素敵な住まいについて解説します。
「古いからこそ価値を見出す」文化
英国の建造物の美しさには理由があります。それは、英国では建造物の高さには法的規制が課され、外観を保つ厳しい保全地区が住宅街にも指定されているということ。
[図表1]英国の法的規制 出所:テート小畠利子著『英国流 「自分に似合う」住まいの作り方:1人の時間も、みんなとの時間も、豊かで楽しい』(大和出版)
[図表2]建設された年を表示 出所:テート小畠利子著『英国流 「自分に似合う」住まいの作り方:1人の時間も、みんなとの時間も、豊かで楽しい』(大和出版)
アンティークショップやチャリティショップがあることも、その理由のひとつです。というのも、英国には、「古いから捨てる」のではなく、「古いからこそ価値を見出す」という文化があるのです。あるとき、立ち寄ったパブで、シンガー(世界初の実用ミシンとして知られるアメリカのミシンメーカー)の足踏みミシンがテーブル代わりに使われていて、その粋な再利用法に感動しました。
子供の頃、母はブラザー(日本の大手電機メーカー)の足踏みミシンで私の服を縫ってくれたものです。やがて足踏みミシンは電動ミシンに取って代わり、今はロンドンの我が家の居間に置かれ、足踏みミシンは大好きな家具のひとつとなっています。百年経てばアンティークとなるので、足踏みミシンも、いずれ本物のアンティークになるでしょう。
さらに、英国には、住まいを他人に見せる文化があることも知りました。自分の好きな空間だからこそ、人に見られることを躊躇しないのでしょう。引っ越せば、親しい人たちを呼んで家をお披露目する「ハウスウォーミングパーティ」を開いて、自宅を全公開する習慣があります。
また、夜になってもカーテンを閉めず、居間やキッチンが丸見えのお宅は少なくなく、ジロジロ見ないようにしても、視界に入ってしまいます。そこには、教養がうかがえる本棚や、趣味のいいインテリアがあり、くつろぐ住人の姿も調和していて、まさに「自分に似合っている」家といえます。