浅田俊彦さん(60歳、会社員)が亡き父の遺品整理をする中で見つけた、見覚えのない通帳。そこには亡き父が俊彦さんのために15年間、110万円ずつ預け入れをしていた記録が残っていました。父の思いやりに感激していましたが、ある日、税務調査官が来訪。こんな言葉を告げられたのです。「これは贈与になりません。相続財産としての申告漏れとなります」……。今回は、多くの人が見過ごしがちな「贈与税と相続税」の盲点について、ファイナンシャル・プランナーの青山創星氏が詳しくお伝えします。
これは贈与になりません…亡き父が残してくれた「110万円ずつ15年間」の預金。感謝する60歳息子に税務調査官が告げた、まさかの一言【FPの助言】
贈与と相続の関係から学んだ大切なこと
税理士との相談を終えて帰宅した俊彦さんは、妻の和子さんと話し合いました。
後日、税務署から修正申告の勧奨が届き、
「この経験から学べることも多かったわね」和子さんの言葉に、俊彦さんは静かにうなずきます。
学んだ教訓
1.贈与の基本的な要件
・贈与は「気持ち」だけでは成立しない
・受贈者本人の口座で自ら管理していること
・贈与の意思表示と受贈の意思表示が必要
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2.名義預金の危険性
・税務調査で発覚するリスク
・相続税の申告漏れとみなされるリスク
・加算税・延滞税の発生につながる可能性
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3.名義預金にみなされないためのポイント
・贈与者から受贈者の口座へ直接振込
・毎年しっかりと署名捺印した贈与契約書を作成(「10年間110万円を贈与する」などの定期贈与は要注意)
・受贈者本人が預金を活用する
・贈与の事実を証明するために、110万円超を贈与して、受贈者が贈与税を申告・納税することも
「お金の贈り方は、愛情の伝え方でもあります。正しい方法で行えば、想いも確実に届くのです」
俊彦さんは、父が注いだ愛情を深く感じながらも、方法を誤ると大きな代償を払うことを学びました。
専門家からのアドバイス
- 生前贈与を考える際は、事前に専門家に相談する
- 税制は毎年のように変更があるため、最新情報の確認が重要
- 感情的な判断ではなく、法律に則った適切な方法を選択することが大切
思いがあっても、正しく行動しなければトラブルになりかねない――俊彦さんの経験は、大切な家族への想いをきちんと「形」にするための心構えを私たちに教えてくれています。
青山創星
ファイナンシャルプランナー