再開発で生まれ変わる街に建てられた、新しいサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。母に安心して過ごしてほしいと、前払い賃料700万円を工面して入居を決めた息子ですが、予想以上にかさむ費用に苦しむことに……。今回の事例では、高齢者施設選びで陥りやすい「お金の落とし穴」と、後悔しない選び方について、FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
自宅で暮らしたがる78歳母を説得、新築ピカピカの「サ高住」に〈前払い700万円〉〈利用料月13万円〉で入居させたが…。まさかの事態勃発で54歳息子が下した“苦渋の決断”【FPの助言】
FPが指南する「後悔しない」施設選びのポイント
この事例から、高齢者施設選びで重要なポイントを紹介します。
1)基本料金以外の総費用を必ずチェック
サ高住の提供サービスは施設によって大きく異なります。国土交通省の統計(参考)では、状況把握・生活相談は必須サービスで全ての施設が提供していますが、食事の提供は96.2%、入浴等の介護は49.5%、調理等の家事は52.9%、健康の維持増進は63.1%と、施設によって様々です。基本料金だけでなく、実際に必要となるサービスを全てリストアップし、総額を把握することが重要です。
2)契約の細部まで確認を
前払い制度を選択する場合、契約期間終了後の更新条件や、中途解約時の返金条件を必ず確認しましょう。「5年後は月額が上がる可能性がある」といった重要事項も、契約書に明記されているはずです。
3)複数の選択肢を比較検討
サ高住以外にも、自立型の有料老人ホームであれば食事の提供が含まれているので持ち出しが少ないなど、様々な選択肢があります。介護が必要になった場合の対応や、医療機関との連携体制なども含めて比較検討しましょう。
4)家族で収支計画を立てる
入居者の年金額、預貯金、家族からの支援可能額を明確にし、長期的な収支計画を立てることが重要です。介護度が上がった場合の追加費用なども想定に入れておく必要があります。
「今の施設は、確かに以前のサ高住ほど豪華ではありません。でも母は、同年代の入居者と将棋仲間ができて、毎日を楽しく過ごしています。施設選びで大切なのは、ハード面の充実よりも、入居者が安心して暮らせる環境かどうか。そして何より、家族の経済力に見合った選択をすることなのかもしれません」
と、誠司さんは今回の経験を振り返ります。
三原 由紀
プレ定年専門FP®