再開発で生まれ変わる街に建てられた、新しいサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。母に安心して過ごしてほしいと、前払い賃料700万円を工面して入居を決めた息子ですが、予想以上にかさむ費用に苦しむことに……。今回の事例では、高齢者施設選びで陥りやすい「お金の落とし穴」と、後悔しない選び方について、FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
自宅で暮らしたがる78歳母を説得、新築ピカピカの「サ高住」に〈前払い700万円〉〈利用料月13万円〉で入居させたが…。まさかの事態勃発で54歳息子が下した“苦渋の決断”【FPの助言】
前払いで一安心も、入居後に待ち構えていた想定外の落とし穴
「ここしかない!」と思った誠司さんは、さっそくサ高住の見学に向かいます。新築で設備も整っており、特にフィットネス設備や運動プログラムの提供があることで母のQOL(生活の質)も改善すればと希望を抱きました。
一方の和子さんも、駅前という立地の良さやショッピングセンターが目の前で街の活気を見て、気持ちも前向きになってきました。ただ、月々24万円(別途、敷金35万円)という利用料に驚きを隠せません。
「前払い賃料制度を利用すれば月額を13万円に抑えられる」という営業担当者の提案に、誠司さんはすがる思いで同意。母のなけなしの貯蓄に、誠司さんの不動産投資でプールしていた収益から700万円を工面し、入居を決めました。
国土交通省が2022年8月末に実施した調査(参考)によると、サ高住の入居費用は平均で月額12万6,000円(大都市圏)、9万1,000円(地方圏)、10万9,000円(全国)です。しかし、これらは家賃・共益費・必須サービス費(生活相談・見守り)などの基本料金に過ぎません。
入居後、誠司さんを待っていたのは、想定外の出費の数々でした。
「食事は別料金で、全て利用すると月4万5,000円。入浴介助は60分4,000円のオプション。電気代も別払いで、エアコンの使用で月1万円以上かかることも……。母の年金では全く足りない状況でした」
結局、誠司さんは半年後、母親を年金で賄える別の施設に移すことを決断することになりました。