
Aさんがたどり着いた“まさかの結論”
だんだんと焦ってきたAさんは、次第にこう思うようになりました。
「Cはやればできるはずだ。これは、塾の指導に問題があるのではないか? 俺が教えたほうがよさそうだな」
そして、学校のあと塾で3時間の授業を受けて帰ってきたCくんに声をかけ、一緒に1日の復習をするようになったのでした。
しかし、朝から晩まで勉強漬けのCくんは、すでにヘトヘトです。また、Aさんも中学受験の経験がないため、中学入試問題の特殊な算数をうまく教えることができません。
「おいC、やる気あるのか! 努力が足りないんじゃないか!?」
フラストレーションが溜まったAさんは、思わず声を荒らげてしまいます。結局、親子の学習は思うように進みませんでした。
塾を増やした結果…毎月の教育費が恐ろしい金額に
学習塾に加え、自身でも息子の勉強をみるようになったにもかかわらず、Cくんの成績は下がったままです。そんな息子の状況にAさんはますます焦りを募らせました。
「このままじゃX中はおろか、滑り止めにしようと思っていたY中も怪しいかもな……」
そこでAさんは次なる手段として、Cくんが苦手としている算数だけ、別の個別指導塾へ通わせることにしました。A家の教育費は、娘Dちゃんの英会話教室の金額を合わせると、月約12万円に膨れ上がっています。
A家の月々の手取り額は、夫婦合わせて月50万円ほどです。ボーナスも合わせると赤字というわけではありませんが、住まいの住宅ローンの金利も上がり、これから先、私立中学へ進学した場合の教育費や老後資金のことを考えると、決して余裕があるとはいえません。
「このままだとお金が足りなくなるんじゃ……」
Aさんの頭に不安がよぎりましたが、背に腹は代えられないと、自分の小遣いを減らし、教育費を増やすことにしました。
しかし、放課後も休日もなくますます勉強漬けになったCくんは、その後もやる気がなさそうに見え、覇気がありません。成績は一向に上向かず、それと反比例してAさんの言葉による叱責はよりいっそう増えていきました。
「なんでこんな問題も解けないんだ!」「このままじゃ人生負け組だぞ!」「もっと努力しろ!」
Cくんは無表情のまま、なにも言い返しません。
妻のBさんが見かねてAさんをたしなめますが、Aさんは聞く耳を持たず、家庭の雰囲気も悪化する一方でした。