収入減&支出増…ミドリさんが専業主婦になると、家計は赤字に

ミドリさんが産休に入ると、その分の収入はゼロとなります。世帯収入は50万円から30万円に減少し、ダイキさんの収入のみでやりくりをしなくてはなりません。

また、単純に収入減となるだけではなく、出産後はオムツや授乳用品、ベビー服などの日用品費やミルク・離乳食などの食費がかかるほか、家での滞在時間が長くなれば水道光熱費も上がります。

前掲の[図表2]をみると、食費は4.5万円、日用品費は1万円、水道光熱費は1.3万円となっていますが、これはダイキさんとミドリさんの2人分。子どもが生まれたら、支出がいまより増えることを想定しなければなりません。ダイキさんの収入のみで改めて試算すると、収支はトントンか、月によっては赤字となる危険性があるのです。

また、子どもが大きくなると教育費も必要になります。

子どもの教育費はどれくらいかかる?

昨年末に公表された「令和6年度子供の学習費調査の結果」によると、保護者が1年間に支出した子ども1人当たりの学習費総額は下記のようになっています。なお、学習費総額とは、学校にかかる教育費以外に給食や習い事など、子どものために支出した費用すべてを含みます。

■幼稚園
公立……18万4,646円

私立……34万7,338円

■小学校

公立……33万6,265円

私立……182万8,112円

■中学校
公立……54万2,475円

私立……156万0,359円

■高等学校

公立……59万7,752円

私立……103万0,283円

上記を参考に試算すると、高校まですべて公立に通った場合の学費は計166万1,138円です。しかし、ミドリさんが希望するように私立の中高に通わせる場合、小学校までは公立だとしても311万1,553円と、前者と比較して約2倍の費用が必要になります。

このほか、大学に進学するとなると、さらに約250万円~約500万円以上の学費がかかってくるでしょう。

今後、就学支援制度が拡充されれば状況は変わりますが、現段階ではまとまった資金準備が不可欠です。

子どもが中学生になるころにはミドリさんも仕事に復帰する予定とのこと。ただし、希望どおり1年後に第1子が生まれ、その2年後に第2子が生まれるとしても、10年以上はダイキさんのみの収入で生活することになります。

そのため、現時点からミドリさんの収入にはなるべく手をつけず、ダイキさんの収入のみで家計管理することを助言しました。ミドリさんの収入を預金するなどしておけば、将来の大きな出費に備えることができます。

“夢物語”から一転、堅実な結婚生活を始めることに

後日、筆者のもとに、ダイキさんから連絡がありました。

「こないだは、本当にありがとうございました。あの日、具体的に試算してくださったおかげで、ミドリも冷静になったようで……。僕も勇気を出して本音を話し、結婚生活のスタートは僕が住んでいる賃貸マンションから始めることにしました」

ミドリさんの仕事については、しばらく専業主婦でいたいのは変わらないそうですが、復職のタイミングは早まる可能性があるとのこと。そこで、FPの助言をもとに少しでも固定費を抑えて預金を増やし、住宅購入費や教育費に回そうという話になったそうです。

「『専業主婦になれば、私のお小遣いは減らすし、毎日お弁当を持たせればダイキさんのお小遣いも減らすことができるわよね? 浮いた分を貯蓄に回しましょう』ってミドリは言うんです。その姿に惚れ直しまして、正式に入籍しました」

生活が落ち着いたら、資産運用などについても相談したいとのことでしたから、2人にはまたいつか会えるかもしれません。とても堅実な印象のカップルで、筆者自身も新生活のスタートを手伝うことができて幸せな気分になりました。


山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表