葬儀後の弔問客や香典返しの対応も思わぬ負担に

母・弓子さんの葬儀は家族葬で執り行われたため、伊藤さんは葬儀後に友人や知人に母の訃報を電話やメール、手紙で伝えました。すると、母の弔問に訪れたいという連絡や香典を送ってくる人が想像以上に多かったことに驚きました。

弔問客を迎えるにあたっては、先方との訪問日時の調整や祭壇を設けるなどの弔問場所の整理、お茶やお茶菓子の準備が必要になります。また、香典をいただく場合には、後日香典返しが必要になります。

香典返しとは、香典をいただいた方に感謝の気持ちを示すために贈り物をお返しすることです。一般的には、四十九日の後、1~2週間以内に、郵送または直接お礼状とともにお渡しします。金額の目安は、香典の3分の1~半額程度と言われています。香典返しの品物は、食べ物や飲み物、消耗品、カタログギフト、クオカードなどが好まれます。

伊藤さんは母の人脈の広さゆえ、個別に弔問客の対応をしたり香典を受け取ったりすることが想定以上に多かったのです。伊藤さんはしばらく休日になると実家に戻り、妻に手伝ってもらいながら対応に追われることになりました。

葬儀の形式や規模、費用はどう考える?

親の葬儀を迎えるにあたって、事前の準備はとても大切です。しかし、いざという時にどのような準備が必要なのか、普段から考えている方は少ないのではないでしょうか。特に、葬儀の形式や規模については、親自身の意思を生前にしっかりと確認しておくことが重要です。

「近親者のみに見送られたい」のであれば家族葬になりますし、「お世話になった方々に見送ってほしい」となれば、一般葬が妥当でしょう。故人の遺志を尊重した葬儀を執り行うことで、遺族の負担を大きく減らすことができます。

葬儀費用についても事前に考えておくべきポイントです。葬儀費用が準備不足だと、遺族の金銭面での負担が大きくなってしまいます。伊藤さんも、母が費用を用意しているとは知らなかったため、費用負担の少ない家族葬に惹かれたという側面がありました。

一般的には葬儀費用は喪主が払うものとされていますが、親が生前に生命保険で葬儀費用を準備しておくことで、遺族の負担を軽減することができます。死亡保険金の受取人を、喪主をお願いすることになる親族に指定しておくといいでしょう。死亡保険金の受取に要する時間も、提出書類に不備等なければ、1週間~10日程度で受取人の口座に入金されます。

また、生命保険以外にも、万一の時の受取人を指定しておくことができる相続型の信託商品※1もあります。生命保険同様にあらかじめ受取人を指定しておくことで、信託された金銭の支払い手続きをスピーディーに進めることが可能です。預貯金で葬儀費用を準備しておく方法もありますが、遺産分割協議等を経たのちに金融機関への手続きをする流れになりますので時間を要することは留意点となります。

また、葬儀費用には、公的補助制度があるのはご存じでしょうか。健康保険や国や自治体からの給付金があり、遺族の経済的負担を軽減することができます。

例えば、後期高齢者医療制度に故人が加入していれば、葬祭費として5万円支給されます※2葬儀を行った日の翌日から2年を過ぎると支給対象とはなりませんので注意しましょう。これらの給付金は申請しなければ受け取ることができませんので、最寄りの市区町村担当窓口に問い合わせるようにしましょう。