年金の繰下げ受給を選択した結果、70歳以降「月33万円」の年金がもらえるとわかり、思い切り“悠々自適な暮らし”を楽しんでいたある夫婦。しかし、年金事務所で提示された“実際の年金受給額”に愕然としてしまいました。いったいなにがあったのか、年金の繰下げ受給で見落としがちな「盲点」について詳しくみていきましょう。ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。
年金月33万円で“余裕の老後”のはずが…60代仲良し夫婦〈年金ルール〉知らず、想定外の減額に絶望「年金繰下げなんてしなきゃよかった」【CFPの助言】
海外旅行、高級車でのドライブ…思い切り老後を楽しむ2人
退職金と貯金を合わせて1,500万円の資産があり、さらに月額53万円の給与と2人の老齢基礎年金があるおかげで、65歳の定年を迎えて以降も、2人はなんの経済的不安もありません。夫婦は現役時代と変わらない自由で充実した日々を送っていました。
良樹さんの趣味は旅行とドライブです。退職金が振り込まれたその月、夫婦は念願だった海外旅行に出かけました。
「せっかくだから贅沢しよう」と豪華なホテルを予約し、現地の名産品に舌鼓を打ちます。旅行した10日間は、2人にとって最高の思い出となりました。
海外旅行から帰国すると、良樹さんは次の“ご褒美計画”を立てました。それは、長年頑張ってきた自分への贈り物として、新車を購入することです。
趣味のドライブをさらに楽しむため、良樹さんは600万円の高級車を購入。ピカピカで広々とした新しい車に乗って、夫婦で各地の温泉を巡ったり、田舎道をのんびり走ったりと、週末のドライブがさらに豊かな時間になりました。
また、定年後は2人の息子家族を連れて国内外の旅行に出かける機会も増えました。
「せっかくの家族旅行だし、子どもたちには負担をかけたくない」と、費用はすべて良樹さんが負担。息子たちは「いやいや、ここまで育ててくれたんだから、俺たちに出させてよ」と提案しましたが、良樹さんは頑なです。息子たちは良樹さんの思いに打たれ、ますます家族の絆が深まっていきました。
しかし、こうした支出を続けた結果、65歳時点で1,500万円あった資産は、5年後には500万円にまで減少。
それでも、良樹さんは「これくらいの資産減少なら大丈夫。70歳からは月に33万円程度の年金を受け取れるし、そこから生活費を抑えれば問題ないだろう」と楽観的に考えていました。