有給申請時に催される“恐怖のイベント”

このように長時間労働が常態化しているため、営業所内の雰囲気はギスギスしていて、上司や先輩からの罵声が飛び交っていた。予定していたルートを回り切って、夜遅くに営業所に戻ってきても容赦はない。

顧客からの「売り切れ」のクレーム対応を翌日に持ち越そうとしていると、「お前なんで『売り切れ』付いてるのに帰ってくるんだよ」、1日に回った自販機数が少ないと見られると「もっと回ってこいよ」などと言われ、20時頃であっても、再びトラックで営業所を出発することになる。

Aさんがミスをすると、先輩から「てめえ、ふざけんな」と怒鳴られ、「こいつ、こんなミスしたよ」と営業所内で言いふらされることもよくあった。

「長い時間働いたやつが偉い」という風潮があり、少しでも休憩を取っていようものなら「俺は休憩取らずに働いてるのに」と妬まれ、残業時間が短いと「あいつサボってるから、仕事振れ」と言われる。

そして、こうした理不尽がもっとも深刻なのは、Aさんの営業所とは別のところ、JR東京駅構内の営業所だった。JR東京駅の自販機を担当するこの営業所では、業務量が膨大で休憩時間が全く取れないだけでなく、支店長による暴力や嫌がらせが頻発していた。

ミスをした従業員は謝罪文を書かされ、支店の全従業員宛てに「公開処刑メール」と件名を付けて流され、さらしものにされた。ミスの罰として「腕立て100回」や支店の全従業員へのエナジードリンク自腹購入、1ヵ月ゴミ捨て担当などのメニューも用意されていた。お尻を蹴られるなどの暴力も珍しくなかった。

極め付けが「有休チャンスクイズ」だ。有給休暇を取得するには、支店長からのメールに書かれたクイズに正解しなくてはならないという、人を馬鹿にした決まりである。逆に正解できないと、「永久追放、まずは降格」だという。

支店長は、「嫌なら辞めれば」「飛ばすよ」と公然と言い放っていたが、こうした支店長の行為を、本社は全く問題視しなかった(後に追及を受けて、会社は支店長の問題行為を一切知らなかったと回答する)。