パチーン!…遺産分割協議の場に響いた“痛快な音”

後日、Aさんから連絡が。

「先日はありがとうございました。あのあと、びっくりすることがあって……」

聞けば、遺産分割協議は1日で終わらず、FPに相談した次の日もCさんが実家に訪れたのだそうです。

義母の家事手伝いと義父の遺品整理のため、実家でテキパキ作業をするAさんに、Cさんは言いました。

「ああ、いたんだ。ごめんねAさん、今日も出てもらえるかな?」

怒りと悔しさであふれる涙を隠しながらAさんが台所へ向かったそのとき……

――パチーン!

驚いて振り返ると、義母がCさんの頬を平手打ちしたようです。

「いいかげんにしなさい! あんた何様なの! Aちゃんはうちに嫁いでから、いままでずっと私たちの世話をしてくれてるのよ。 海外でずっと好き勝手やっているあんたより、Aちゃんのほうがよっぽど家族なんだから」

それとね、と言って、義母は戸棚から「遺言書」を取り出しました。

「お父さんの遺言には、『Aちゃんにもきちんと遺産を相続するように』って書かれてありますから。C、あんたはお父さんの遺産を目当てに帰ってきたのかもしれないけど、あんたに渡すお金はありません」

義父母はAさんのために、生前から対策をしてくれていたようです。おかげで、Aさんにも遺産が相続されることになりました。

“長男の嫁”には遺産相続権がないため、財産を渡すためには遺言書や養子縁組、生命保険、生前贈与などをうまく組み合わせて利用する必要があります。

将来、遺産を受け取れないのではないかと不安な人や、遺産相続権のない人に財産を承継させたい人は、専門家に相談しながらあらかじめ対策を講じておきましょう。

工藤 由美子
FP Office株式会社
ファイナンシャルプランナー