東京オリンピック選手村跡地の「晴海フラッグ」は、高倍率の抽選が話題になるほどの人気ぶり。晴海フラッグをはじめとして、タワーマンション価格の値上がりは人気を反映しています。しかし一方で、実際に住んだ人からは意外な声も。本記事では、Aさん夫婦の事例とともにタワーマンションの思わぬ落とし穴について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
もう、揺れて揺れて…「晴海フラッグ激戦」に敗北も、諦めきれず湾岸タワマン最上階を購入の世帯年収2,500万円・30代「エリートサラリーマン×公認会計士」パワーカップル。低層階に引っ越したワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

どうしてもタワマンがよかった世帯年収2,500万円の30代パワーカップル

晴海フラッグ板状棟の激戦に敗れた大手企業に勤務するエリートサラリーマンの38歳夫と公認会計士である30歳妻は、23区内の別の湾岸地区にあるタワーマンションを購入した世帯年収2,500万円のパワーカップルです。それまでは、賃貸マンションの2階で暮らしていましたが、ステータスの表れや投資目的のほか「やっぱり眺望のいい部屋に一度住みたいのよ」という妻の意見から、話が進みます。いい物件との縁もあり、思い切ってタワーマンションの最上階を購入することに決めたのです。

 

さぞや優雅な毎日を送っているだろうと思われましたが、なんと入居して数ヵ月も経たないうちに売りに出したというのです。売却理由は意外にも妻の体調の悪化でした。

 

「入居してしばらくは快適だったんですが、もう揺れて揺れて……。たぶん揺れに敏感になってしまったようです。近ごろは寝つきも悪くなった気もするんです」

 

タワマンは強風で揺れるのか

一般的にタワーマンションとは、20階以上、高さが60mを超える超高層マンションを指します。タワーマンションには耐震・制震・免震といった地震対策が施されており、非常に厳しい基準で建てられていますから、地震に弱いということはありません。

 

一方で、建物自体の倒壊は防ぎやすいものの、高層階になるほど揺れが大きくなる構造となっています。高階層に住んでいてもなんともない人も多いのですが、Aさんの妻のように体調を崩してしまうケースもあるようです。

 

なお、地震が発生した場合の高層建物で発生する周期の長いゆっくりとした大きな揺れを「長周期地震動」といいます。気象庁のホームページでは、長周期地震動について次のように説明しています。令和5年(2023年)2月より、新たに長周期地震動に関する観測情報のオンライン配信もスタートしています。

 

地震が起きるとさまざまな周期を持つ揺れ(地震動)が発生します。ここでいう「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。南海トラフ地震のような規模の大きい地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。このような地震動のことを長周期地震動といいます。建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があります。地震波の周期と建物の固有周期が一致すると共振して、建物が大きく揺れます。高層ビルの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と「共振」しやすく、共振すると高層ビルは長時間にわたり大きく揺れます。

 

また、高層階の方がより大きく揺れる傾向があります。長周期地震動により高層ビルが大きく長く揺れることで、室内の家具や什器が転倒・移動したり、エレベーターが故障したりすることがあります