ある日、自宅に届いていた、日本年金機構からの「一通の封書」

自宅を元妻に明け渡したミツルさんは、近隣の賃貸マンションに移ることにしました。一人暮らしにはやや広めの2LDKで、家賃は14万円です。敷金、礼金、家具や家電の購入、引っ越し費用などの新生活の準備のため、預金を150万円取り崩しました。

財産分与したとはいえ、ミツルさんにはまだ月26万円の年金に加え約2,000万円の預金があります。ミツルさんには心の余裕がありました。

しかし、だんだんとその“余裕”がなくなっていきます。離婚から半年ほど経ったころ、日本年金機構から一通の封書が届きました。早速開封してみると、「標準報酬改定通知書」と書いてあります。

実は、元妻のイクコさんが年金の「3号分割」の申立てを行っていたようです。

年金の「3号分割」とは?

3号分割とは、離婚した夫婦の一方が国民年金の「第3号被保険者」である場合に、相手の合意なしに「年金の分割」を請求できる制度です。2008年4月1日以後の婚姻期間が対象となっており、分割割合は厚生年金の報酬比例部分の1/2です。なお、基礎年金部分は分割の対象外となります。

分割を請求できる期間は、離婚した翌日から2年以内です。また、分割された年金は自身の年金記録として扱われます。仮に再婚しても年金額は変動しません。

3号分割は合意が不要ですが、このほか、双方の合意が必要な年金分割の方法として「合意分割」があります。3号分割と合意分割の要件、およびそれぞれの違いは下記のとおりです。

出所:筆者が作成
[図表]「3号分割」と「合意分割」の違い 出所:筆者が作成

大石夫婦の場合、対象となる婚姻期間は15年間です。イクコさんの3号分割の請求により、ミツルさんの厚生年金記録が再計算され、月額2.5万円がミツルさんからイクコさんの年金記録へ移ることに。その結果、ミツルさんの年金は月26万円から23.5万円に減額になってしまいました。