〈登場人物紹介〉

●安藤なつ…介護歴約20年。現場のことはある程度わかるけれど、制度やお金のことについて詳しく知りたい。

●太田差惠子…取材歴30年以上の「介護とお金」に詳しい介護ジャーナリスト。費用を抑えるための介護制度や、プロの手の借り方について解説。

有料老人ホームの「入居一時金」が高額な納得の理由

CHECK!

□入居一時金は家賃の前払い

□長く入居するなら支払ったほうがトクなケースもある

安藤:どうして施設へ入居するときは、あんなにお金がかかるんですか? 都心部だと何千万円もかかりますよね。

太田:有料老人ホームの入居一時金のことですね。施設介護はお金がかかる……、というイメージを抱く原因のひとつです。数百万円とか、数千万円という数字を見るとびっくりしますよね。でも、これは「前払い金」ともいい、一定期間の家賃を先に払うものなのです。一定期間とは、その施設にどれくらいの期間住むことになるかを想定した年月で、施設ごとに決められています。

安藤:でも、すごく大きなお金ですよね。何年分の家賃を前払いすればいいんですか?

太田:介護専用の施設では5年分程度が一般的ですが、住宅型では10~16年分ぐらいと、施設により幅があります。つまり、前払い金の額だけを見て、高いとか、安いとか決めつけることはできません。大切なのは、それが何年分の家賃かということ。そして、前払いすると、月々払う家賃はゼロ、もしくは少なくなります。

安藤:そうなんですね。入居一時金=高い施設と思い込んでいました。では、一時金を払うほうがおトクなんですか?

太田:誰にも寿命は読めないので、何ともいえません。ただ、前払いした年月の途中で退去、もしくは死亡したら、未償却金は戻ってきます。でも、入居した日から91日目に償却された金額は戻ってきません。

また、前払いした年月を超えて住み続けても追加料金は必要ないんです。つまり、一時金を払う場合は、“長生きするとトク”とはいえますね。

安藤:でも、それってわかりませんよね。

太田:そうですね。最近は前払いをしない、もしくは支払い方法を選べる有料老人ホームも増えています。施設の倒産などもありますし、慎重に考えましょう

出所:『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より抜粋
[図表1]入居一時金のイメージ 出所:『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より抜粋