有料老人ホームを検討する人の頭を悩ませるのが、高額な「入居一時金」です。特に都市部となると、数百万円~数千万円の一時金が必要な施設も珍しくありません。介護ジャーナリストの太田差惠子氏と芸人の安藤なつ氏による共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より、入居一時金が高額な理由と、必ず把握しておきたい「入居後の落とし穴」をみていきましょう。

数千万円をドブに捨てる可能性も…有料老人ホームに入居した親が「施設になじめない」→〈入居後90日以内〉の子の決断が命運を握る【安藤なつが介護ジャーナリストに聞く】
親が「家に帰りたい」とゴネたとき…入居後〈90日以内〉に決断を
CHECK!
□重要事項説明書で入居一時金の扱いを必ず確認
□入居一時金が戻る「クーリング・オフ制度」と「返還金制度」
安藤:入居して1ヵ月もたたないうちに、親が施設になじめず家に帰りたいと言い出したら入居一時金はどうなるのでしょう。
太田:高齢になってからの度重なる引っ越しは体調を崩す原因にもなりますし、子どもにとっても施設探しをもう1度最初からやり直すのは大きな負担です。退去はできれば避けたいことですが、そうなったら即、決断して、すぐ行動に移してください。
安藤:ええ~! そんなに急がなくちゃいけないんですか。
太田:はい。90日以内に退去すればクーリング・オフ制度が適用されて、前払い金は全額返還(実際にかかった費用を除く)してもらうことができます。
安藤:そうなんですね、だったら急がなくちゃ。
太田:かつてはこのような制度がなかったので、入居一時金をめぐって事業者と入居者の間でトラブルになることも少なくありませんでした。そのため施設の入居一時金も、訪問販売などの特定商取引に適用されているクーリング・オフ制度の対象になったんです。
90日を過ぎたら、「償却期間」に応じたお金が戻ってくる
安藤:でも、90日を過ぎたら1円も戻ってこないんですよね。
そんなことはありません。入居一時金には初期償却率と償却期間が定められていて、償却期間内なら期間に応じたお金が戻ってきます。
[図表2]の入居一時金500万円、初期償却率は40%の例で説明すると、40%の200万円はクーリング・オフ期間が終わった時点で償却され返還されません。しかし残りの300万円は償却期間の5年間、月単位で5万円ずつ減り、入居から満5年でゼロとなります。
安藤:なるほど、きちんと考えられているんですね。でも、事業者が倒産してしまったら戻ってきませんよね。
太田:これも、これまでトラブルになりがちな問題でしたが、2021年4月からすべての有料老人ホームが、未償却の一時金は最大500万円まで保全措置を講じなくてはいけないと法律で義務づけられました。
安藤:いろいろなセーフティネットがあるんですね。
太田:これらのことは、すべて「重要事項説明書」に書いてあります。重要事項説明書をきちんと読んで理解しておけば、トラブルを避けることができます。
安藤:なるほど~。面倒がらずにちゃんと読みます。
安藤 なつ
メイプル超合金
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト