早くにパートナーを亡くしたり独身のまま老後を迎えたりして、孤独を感じている高齢者は少なくありません。今回はそんな孤独につけこまれた結果、老後資産をほとんど失ってしまった男性の事例を小川洋平FPが詳しく解説します。
夢を見てしまいました…妻亡き後、孤独に暮らす資産5,000万円・72歳の年金暮らし男性。ある日受け取った「胸躍るメッセージ」に歓喜した数ヵ月後、悔恨の老後破綻へ【CFPの助言】
心を許した女性からのお誘いに舞い上がった結果…
すっかり早苗さんに心を許した高橋さん。そんなときに早苗さんから、とある説明会に行かないかと誘われました。ドバイにある会社の、暗号通貨による投資案件です。10万円からスタートでき、毎月10%という超高利回りを狙っていけるというものでした。
堅実な高橋さんは投資の経験はゼロ。初めは怪しんでいたのですが、早苗さんが現に半年以上も利益の分配を受けているというのです。
「1,000万円でも投資してくれれば毎月100万円の利益が得られて、二人で海外旅行に出掛けたり夢のような生活ができる」
心を許した早苗さんからのこんな言葉ですっかり舞い上がってしまった高橋さんは、残りの老後資金の大部分4,500万円にもなるお金を、その怪しげな投資話に投資してしまったのでした。
4,500万円を投資、散財しつくした後に残った残酷な現実
初めの2ヵ月は約束通りに500万円ものお金が毎月入ってきました。そのため高橋さんもすっかり信じ込み、二人でファーストクラスで海外旅行に出掛けたり、散財してしまいました。
しかし、その後、何の連絡もなく入金は途絶えてしまい、その会社は倒産。早苗さんとも連絡がつかなくなりました。
これはポンジスキームと言われる詐欺で、高利回りを謳い出資を募り、初めのうちは実際に利益を分配して信じ込ませて出資者を増やしていきます。しかし、実際に分配するのは出資者から集めたお金を分配されているわけで、そんな状況がいつまでも続くはずはありません。どこかで必ず破綻することが初めからわかっている詐欺です。
早苗さんはその詐欺に加担し、複数の独身男性や高齢男性の懐に入り込み出資させていた、いわゆるロマンス詐欺でした。高橋さんは、ありったけの老後の資金と同時に愛する人を失ってしまったわけです。
夢を見た果てに残ったのは、わずかばかりの貯金と、この先どう生きていけばいいのかという不安だけでした。