たちまち火の車になった家計

彼女と再婚したのは、ほとぼりが冷めた離婚後2年目のことだったのですが、いざ一緒に暮らし始めると家計はたちまち火の車に。

理人さんの手取りは毎月30万円(賞与なし)ですが、支出は約31万円なので赤字の状態。貯金がないので車検(8万円)のためにカードローンに頼る有り様でした。

<支出の内訳>

家賃 80,000円

水道光熱費 20,000円

下水道代 3,680円

食費、その他の日用品 60,000円

携帯代、Wi-Fi代、CATV代 16,000円

保険(生命保険等) 15,000円

自動車ローン 30,000円

交通費(ガソリン代等) 10,000円

カードローンの返済 9,000円

住宅ローン 40,000円

養育費 30,000円

計 313,680円

筆者は「このままでは支払を軽くできませんよ」と注意。なぜなら、裁判所によると「養育費の見直しが認められるのは離婚時、予見できない事情が発生した場合」です。(昭46年4月5日、福島家庭裁判所判決)。

しかし、今の妻との子どもを養うことは離婚時に予見できたはずなので、元妻が子の年齢を知ったらゲームオーバーです。

理人さんは元妻にLINEを送りました。「実は今、生活が苦しいんだ。再婚したし、子どもも産まれた。悪いけど来月から養育費だけにしてほしいんだ」と。しかし、元妻にとっては寝耳に水。「ローンも養育費も払うっていうから離婚してあげたのに……話が違うじゃない!」と門前払いされたのです。

ただ、離婚後、事情変更が発生した場合、養育費を見直すことは法律(民法880条)で認められています。

残念ながら、離婚時、決めた金額が最後まで保証されていませんが、元妻はまだ食い下がります。「本当に子どもがいるの? 養育費を払いたくないだけじゃ……嘘つかないで!」と。

ところで離婚時、妻は必ず、夫の戸籍から抜けますが、子が抜けるかどうかは任意です。今回の場合、子は理人さんの戸籍に入ったままでした。そのため、元妻が子の戸籍を閲覧すると理人さん、現妻、子の存在まで確認することができ、子の生年月日を知ることができます。そのため、筆者は前もって「住民票なら生年月日を省略することが可能ですよ」と助言。

理人さんは戸籍謄本ではなく、生年月日なしの住民票を用意。写真を撮り、「(現)妻と知り合ったのは離婚してからだよ」と書き添え、元妻へ送信したのですが、元妻はまだ納得せず、「急に言われても無理。どうしても3万しか払えないの?」と反論しました。

では、理人さんが再婚し子が産まれた現状で、元妻の子の養育費はいくらが妥当なのでしょうか? 元夫に子どもが産まれた場合、家庭裁判所の「新算定方式」(判例タイムズ1111号291頁)に家族構成や経済状況を当てはめて計算します。

  1. 算定方式における基礎年収(年収の0.4倍)を算出する。
  2. 大人は100、14歳以下の子どもは62、14歳以上の子どもは85とし、元妻の子÷元夫+彼女+元妻の子+現妻の子の係数を算出。元夫の年収に係数を掛けると「子どもの生活費」になります。
  3. 子どもの生活費×元夫の基礎年収÷元夫の基礎年収+元妻の基礎年収が妥当な養育費の金額です。

今回の場合、養育費は毎月3万円が妥当な金額です。そこで理人さんは「ちゃんと計算したんだ」と回答したのですが、元妻は「私にとっては隼人(元妻の子)が一番大事。正直言って、そっちの子がどうなろうと関係ないから!」とキッパリ拒否しました。