社長はビジネスにしか興味なし…過酷すぎる労働環境

この施設の利用者の定員は10名。1日2〜3人の職員がシフト制で出勤して、高齢者を介護していた。夜の「お泊まりデイサービス」も連日5〜6人が利用していた。ただし「お泊まりデイ」は、たった1人の職員による「ワンオペ」で行われていた。

社長は繁華街でバーを経営しており、本業の片手間にひと儲けしようとして、数年前に介護業界に参入したばかり。未経験なので、施設の仕事は現場の職員に丸投げし、介護に関心がないのは明白だった。

できるだけ多くの利用者をかき集め、そこに最小限の職員をあてがい、手軽に利益を上げるビジネスとしか考えていなかったのだろう。そのため職員は少なく、労働環境は過酷だった。

休憩なし、休日なし…面接で断ったはずの「24時間勤務」も強要

定時は9時から18時までだったが、タイムカードを切ってから1時間〜1時間半程度、残業するのが常態化していた。

朝9時から翌朝9時まで日勤と夜勤を通しで行う24時間勤務のシフトも、月2回ほど回ってきた。Iさんは社長に、夜勤や24時間勤務はできないと面接時に約束してもらったはずだと確認すると、「そんなこと言ったっけ」ととぼけられてしまった。24時間勤務のときですら、休憩らしい休憩を取る余裕はなく、食事も立ちながら食べた。

急に、シフト変更や休日出勤をさせられることもあった。また、IさんとIさんへの嫌がらせをやめない先輩職員だけが看護の資格を持っていて、利用者にインシュリン注射を打てるため、この業務を2人で押し付け合うかたちになっていた。

先輩が休んだため、Iさんは1週間以上休めないときもあった。急な出勤命令があり、自宅のアパートまで同僚が車で迎えに来て、施設まで強制的に連れていかれたこともあった。給料の遅配や、給与明細と振り込み額が違うことまであった。

もとから精神科に通っていたIさんは、当然、症状が悪化。しかし、先輩職員からは「リフレッシュ方法が悪いんじゃないの」と突き放され、自己責任として扱われた。