接客においての挨拶には特別な力があるようです。なかには、挨拶の力によって店が繁盛したり、客足が戻ったり……。本記事では、元ANAのCAで人材教育講師の三上ナナエ氏の著書『一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)より、接客の「挨拶」において言葉以上に大切なものについて解説します。
15年以上行列の途絶えないラーメン店…「味」以外の繁盛の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

挨拶を何のためにやっているのか?

ここで本当に大切なのは、「その挨拶を何のためにやっているのか?」という意識ではないでしょうか。言い方を変えると、「その挨拶にどんな思いを込めているのか?」ということです。

 

そこで、少しセルフチェックをしてみましょう。以下に、基本的な接客用語をいくつかあげてみます。あなたはこれらの挨拶をする時にどんな気持ちで声を出していますか? 少し考えてみてください。

 

・いらっしゃいませ

・はい

・どうぞ

・お待たせしました

・申し訳ございません

・ありがとうございました

 

さて、いかがですか? いろんな思いがあると思いますが、私自身は総じて言うとこんな思いを込めています。

 

・いらっしゃいませ=歓迎の気持ち

・はい=素直な気持ち

・どうぞ=積極的な気持ち

・お待たせしました=謙虚な気持ち

・申し訳ございません=お詫びの気持ち

・ありがとうございました=感謝の気持ち

 

言葉に思いをのせることは、ただ言葉を交換するだけでなく、思いを交換することにつながります。そうすることで、あたたかで爽やかな雰囲気を、お客様に感じていただけるのです。

 

先ほど私自身の例を少しあげましたが、その答えは一つではありません。例えば、「ありがとうございました」一つとっても、

 

・わざわざ貴重なお休みにお越しくださり、ありがとうございます

・気をつけてお帰りくださいませ

・またぜひお越しください

 

このように、いろんな思いがあると思います。大切なのは、その時挨拶という行為を通して、相手の方にどういう思いを伝えたいのかを意識すること。

 

状況によって込める思いを意識して声を出すことで、自然と表情や声のトーンも変わります。同じ「ありがとうございました」という言葉が、まったく違う意味を持つ言葉のようになるのです。これは機械にはできない、人間だからこそできることです。極論すると、発する言葉よりも、その時に「どんな思いを持ってお客様と相対しているのか」のほうが重要だと言ってもいいと思います。

 

客足が戻った理由

私の両親が昔お店を営んでいた時、お客様が少なくなった時期がありました。何が良くないのか考えたところ、感謝の気持ちを忘れかけていたことに気づき、もう一度初心に戻って、お客様の背中に「来てくださって感謝しています」と心の中でつぶやくようにしました。すると、不思議なことにお客様が戻ってきてくださったんです。お客様に思いを込めた挨拶をしていながらも、自分自身が大事なことを忘れないための効果もあったようです。

 

人は、相手の言葉を聴いているのではなく、その言葉の奥にある相手の意識を感じ取っているのです。挨拶はそこに思いがのった時に初めて、相手にとって意味のある気持ちの良いものになるということを、ぜひ忘れないでくださいね。

 

POINT:言葉だけでなく、動きで心は伝えられる

 

 

三上 ナナエ

元CA・人材教育講師