保護者が子どもの頃にした「体験」は、自分の子どもにも影響します。自身もひとり親家庭で育ったシングルマザーの菊池さん(仮名)へのインタビューを通じて、ひとり親世帯の厳しい現実をみていきましょう。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より紹介します。
耳に残るママ友の「いじめた子はひとり親なんですって」という偏見…パート月収10万円・シングルマザーが周囲に「離婚の事実」を隠す理由【インタビュー】 (※写真はイメージです/PIXTA)

ちょっと卑怯化もしれないですけど…子どもの「習い事」に対するホンネ

―団体の支援を受ける前は、習い事などについて家庭の中でどう話されていましたか。

 

習い事となると月々5,000円以上はするところが多いですよね。現実的には厳しいです。子どもたちが学校で聞いてきて何かやりたいという話をしたときには、「ちょっと調べてみるね、考えてみるね」というふうに言っていたと思います。

 

ちょっと卑怯かもしれないですけど、「習い事だとこの曜日のこの時間は決まった場所に行って決まったことをするからちょっと負担になるかもしれないよ」みたいなことを言っちゃったりもしていましたね。良い印象ばかりじゃないものを与えるというか。

母「体験は宝だから」…泣きながら弾いたピアノ。子どもの頃の思い出

―菊池さんご自身が子どもの頃は習い事などされていましたか。

 

私の母は自分自身もアクティブだし、子どもたちにも「体験は宝だから色々とやらせたい」みたいなタイプでした。コンサートとかバレエとかミュージカルとか、連れていってもらいましたね。妹と3人で。

 

習い事も、バレエを幼稚園のときに、ピアノを4歳から12歳までやっていました。母は自分がピアノを途中でやめていたみたいで、娘たちにはちゃんと弾けるようになるまでやらせたいということで、とても厳しくされました。家にアップライトのピアノがあって。

 

ピアノの先生も厳しくて、私はあまり好きじゃなかったです。子どもに言う表現じゃない言葉で教えたり。毎日1時間以上の練習で、泣きながらやったり。指が動かなくて間違えると、「はいもう1回」って言われたり、同じところを50回やってとか。中学に上がる頃に、勉強が忙しくなるからと自分から言ってピアノはやめました。

 

ピアノだけはトラウマじゃないですけど、こんな感じだったので、自分から子どもに対して「ぜひやろうよ」とは言わないですね。本人が「やりたい」って言ったら別ですけど。