保護者が子どもの頃にした「体験」は、自分の子どもにも影響します。自身もひとり親家庭で育ったシングルマザーの菊池さん(仮名)へのインタビューを通じて、ひとり親世帯の厳しい現実をみていきましょう。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より紹介します。
耳に残るママ友の「いじめた子はひとり親なんですって」という偏見…パート月収10万円・シングルマザーが周囲に「離婚の事実」を隠す理由【インタビュー】 (※写真はイメージです/PIXTA)

母は働くのも遊ぶのも好きな人なので…菊池さんの「親」との関係性

―菊池さんのお母さん(子どもたちの祖母)はお近くに住んでいますか。

 

両親は私が子どもの頃に離婚していて、今住んでいるところは母親の実家の近くです。

 

ただ、私の母は働くのも遊ぶのもとても好きな人なので、孫がいつ来てもいいよという感じではないんですね。まだ若いし、自分の予定で忙しいので、預けすぎるとあまりいい顔をしないというか。元気でいいんですけどね。

 

なので、実家が近いから助かるということはあまりないです。いざというときは助けてくれると思うんですけど、「ありがとう、ありがとう」って言いながらだと肩身が狭い感じもするので、お金を払ってシッターさんに頼んでというほうがさっぱりしていて私の気持ちは楽です。もちろん高かったらできないですけど。

 

―ご自身もひとり親家庭で育たれたんですね。

 

そうですね。父との交流は今でも続いていて、出産前ですけど、父と旅行とかもしていました。今は母と父の関係は良好で、父が母のもとに遊びに来たりもしています。

 

子どもの頃は、ひとり親であることが何か恥ずかしいという感じがしていました。別に引け目を感じることではないと思うんですけど、「ひとり親だと貧乏なんじゃないか」とか、そういう偏見をクルクルと子どもの頭ながら考えてしまうんですよね。それもあって、離婚したことは周りの人には言っていないです。

 

例えば、これは私の今のママ友の話ですけれども、「何々さんちの子がいじめられたんですって、いじめた子はひとり親なんですって」っていう話をしてきたんですね。私がシングルだということは知らないので。お母さんしかいないから、叱ってくれる人がいないから、子どもがだらしないんじゃないかとか、乱暴なんじゃないかとか。まだそういう偏見があるんだなって思いました。

 

子どもが学校で親が離婚していることがわかって、いじめられたり、差別を受けたり、偏見を持たれたりしたら嫌だなというのもあって。学校の先生は公言しないと信じているので言いましたけど、ママ友とかには言っていないです。

 

困ったときに安心して相談できるのは、本当の他人ですね。近くにいる人ではなくて。あるNPOのメルマガには登録しているのですが、まだ相談したことはありません。

 

 

インタビュイーのプライバシーに配慮して名前は仮名とし、一部の情報に加工を施している。

 

 

今井 悠介
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン
代表理事