イルカショーなどのイベントや独自のプログラムなどで海の生き物の生態や進化の秘密を発見できる水族館。最近は最新のデジタルテクノロジーで海の世界の魅力を伝える水族館や、来場者がオンラインで餌やりに参加できるプログラムスマートフォンをかざすだけで水槽にいる生物名と解説が表示されるサービスを備えた水族館も増えています。最新テックを導入した水族館をご紹介します。
最新デジタルテックと融合したショーやオンライン餌やりも…進化する水族館テック マクセルアクアパーク品川で開催するドルフィンパフォーマンス ナイトver.「Bright Christmas Party 」イメージ(横浜八景島、ネイキッド提供)

ペンギンの個体識別システムを水族館で実証実験、手描き入力した模様から類似度を算定

マクセルアクアパーク品川と並び東京で人気の水族館、サンシャイン水族館(東京都豊島区)。ここでの人気者は「空飛ぶペンギン」です。頭上に水槽が設置され、羽を広げて自在に泳ぐペンギンを眺めることができる人気のコーナー。サンシャイン水族館のペンギンは個体数が多く、どれも同じに見えてしまうために個別のペンギンを愛でるという体験はしづらい面がありました。

 

しかし最近の動物園や水族館のトレンドは、「個」を発信して「推し」を見つけてもらうことで、愛着を持ってもらうこと。ひいてはそれを生物への理解や保全へとつなげていく取り組みが始まっています。

 

「写真」ペンさくイメージ(サンシャインシティ、明治大学提供・以下同)
ペンさくイメージ(サンシャインシティ、明治大学提供・以下同)

 

サンシャイン水族館では、2024年10月に明治大学と共同でペンギン個体識別システム「ペンさく」の一般客型の実証実験を行いました。「ペンさく」は、スマートフォン画面上のペンギンのイラストに、観察したい個体の特徴となるお腹の模様を塗り絵感覚で入力することで個体識別を行い、類似度が高い順に検索結果が表示されるしくみで日本初のサービスです。実現できたのは、ペンギンを至近距離で観察できるサンシャイン水族館ならではの環境があったからとしています。従来の画像識別とは違い、観察をしながら能動的に特徴を捉えることで、ペンギンに愛着を持ってもらったり、個体を覚えてもらったりという狙いがあるそうです。

 

同システムを開発した明治大学総合数理学部の中村聡史研究室は、ペンさくは将来的なサービス化により日本全国・世界各地の水族館への展開を見据えたもので、個体の特徴や性格といった詳しい情報も提供していくことができるようになるそうで、「野生環境下における生態調査へ応用することで野生生物の詳細な行動調査が可能となるなど、研究分野への貢献も期待できる」としています。

 

ペンさく
ペンさく

 

サンシャイン水族館の飼育スタッフ・芦刈治将さんも「もう一歩、もう少し、このペンギンのことを伝えたい。日々、飼育スタッフはそんな思いを持ちながら、お客様の発見の手助けをしています。ペンギンは、観察をしていると色々な疑問が湧いてきます。その疑問に少しでもアプローチできるのが、このペンさくだと感じました」と話し、「自然界のペンギンの個体識別も可能となり、生態や行動の調査などにも活用できれば、絶滅が危惧されている生き物を救う一助になれるのではないか、とも思っています」と期待を寄せています。