いくら生成AIが発達しても、「営業」は人がやるものだと多くの人が思っているのではないでしょうか? 一方で、現場では「資料作成など、事務処理に工数がかかる」「営業人材の育成がうまくいかない」などの悩みもあり、営業職のビジネスパーソンに多大な負荷がかかっている状況も無視できません。そこで現在では、営業活動にAIを導入する動きが少しずつ広まり始めています。本記事では、AIを活用した営業活動の事例を紹介します。
「営業は人がやるもの」の固定概念を覆す…営業×AIで見えてきた未来の営業活動とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

顧客とのコミュニケーションをアドバイス。AIを活用した顧客情報管理システム

最後に紹介するのは、AIを活用した顧客情報管理の事例です。

 

住友生命保険は2024年9月、AIを活用した営業職員の顧客情報管理システムを11月25日から運用開始すると発表 。同システムは、AIを活用したサービス開発などを手掛けるエクサウィザーズが開発を支援したもので、AIがデータを活用して営業職員をサポート。営業活動のレベルアップや効率化につながることが期待されています。

 

住友生命保険では、これまでも営業職員が取得した顧客の意向などを営業用端末に収集し、活用していましたが、同システムを導入することで蓄積されたデータの中からタイムリーな情報をもれなく把握することができ、顧客に必要な情報を適切に届けられると考え、運用に着手しました。

 

同システムの特徴は、AIがデータを活用して営業職員の顧客対応をサポートする機能を備えていることが挙げられます。具体的には、営業職員が取得したデータを活用して顧客対応のリマインドをしたり、次に対応すべきことを示唆したりする……などです。

 

さらに、生成系 AI を組み込んだチャットボット機能も有しており、トピックごとの話題のヒントを提供します。 AIが顧客とのコミュニケーションのアドバイスを行えるというもので、取得したデータによって幅広く顧客の趣味や嗜好を把握したAIが、コミュニケーションを深めるためのアイスブレイクにつながるヒントを提示します。

 

こうした機能に加え、蓄積されたデータを基に活動状況に応じたお礼状の文面も作成。その二次元バーコードをスマートフォンで読み取ることでテキストを送付できるなど、便利な機能が盛り込まれています。

 

住友生命保険では、このシステムを活用することで顧客と対面する「人の価値」を高め、営業職員をより必要とされる存在に進化させていく考え。その先の目標として、営業職員の入社5年後の在籍率 40%を達成させることを目指しています。

 

自律的にタスクを実行するAI、商談の会話を書き起こして分析してくれるAI、顧客とのコミュニケーションのアドバイスをしてくれるAI……今回紹介した事例を見ても分かるように、これまでは「人がすること」だと思われていた業務を、今はAIが代行、支援してくれる時代に突入しています。

 

面倒な事務作業はAIに任せ、自分はより価値の高い仕事を創出することに専念する……これからは、そんなふうにAIを活用した働き方が、営業職に就くビジネスパーソンのスタンダードになるのかもしれません。

 

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<プロフィール>

カワハタユウタロウ

フリーライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、Eコマース・通販関連業界紙の編集部に約7年間所属。その後、新聞社系エンタメニュースサイトの編集部で記者として活動。2017年からフリーランスのライターとして、エンタメ、飲食、企業ブランディングなどの分野で活動中。