日本は国民皆年金とされていますが、実際は資格期間が足りず年金がゼロ円だったり、資格期間を満たしていても低年金だったりするケースも。そのような高齢者は何を思っているのでしょうか。
年金なんてバカにしていたよ。築60年の市営団地に住む「年金月2万円」80歳のおひとり様男性、「早く寿命が尽きれば…」と人生を大後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

80歳男性…65歳でも「年金ゼロ円」のワケ

橋本さん、若いときは夜の飲食店で働き、年金保険料は基本的に未納。保険料を払い出したのは、50歳を超えてからだといいます。そして原則、老齢年金の受け取り開始である65歳になったのは平成21年(2009年)。しかし橋本さんは65歳に達しても、年金を1円も受け取ることができませんでした。保険料の納付期間が25年に達していなかったのです。

 

現在、老齢年金を受け取るための保険料納付期間は、猶予・免除期間も合わせて10年。ただ平成29年8月1日以前は25年以上が必要でした。橋本さんは、老齢年金を受け取る資格を有していなかったのです。

 

資格期間の変更当時、保険料納付期間が10年未満の人に対しては、最長70歳までの任意加入を勧めたり、過去5年以内に未納期間や未加入期間がある場合は、平成30年9月までであれば保険料を後納したりすることができると案内されました。橋本さんの場合、資格期間が12年あったため、年金請求書が送られてきて、73歳から年金を受け取れるようになったといいます。

 

ただその金額は、というと、月2万0,400円(令和6年度)。さらに年金生活者支援給付金を月5,000円強プラスされ、今は月2万5,000円ほどを受け取っているといいます。

 

年金に加えて、貯金を取り崩して生活する日々。昭和30年代に建てられ、築60年を超えるという市営住宅は、家賃が5,000円弱。食費、光熱費を極力抑えた日々で、月の支出は4万円いかないほど。

 

――貯金の取り崩しは、月に2万円もいかないほど

 

橋本さんが暮らす地域の最低生活費(生活扶助基準額)は6万8,820円。家賃に相当する住宅扶助基準額は4万4,000円です。収入面からみると、橋本さんは生活保護を受給できる水準ですが、貯金があるため、生活保護を受けることはできないといいます。

 

貯金通帳の残高は50万円ほど。もし月2万円を取り崩すと、あと2年ほどで底をつく計算です。貯金が最低生活費を下回れば生活保護を受けることができます

 

――あと少しで平均寿命を超える。そこで寿命が尽きればな。生活保護の世話にはなりたくない

――自由に生きてきたけど、あまりお勧めしないな、こういう生き方は

 

厚生労働省『令和5年簡易生命表の概況』によると、2023年の男性の平均寿命は81.09年。平均寿命で、と考えるものの人の生き死には誰にも分からず、貯蓄が尽きるが先か、それとも……。80歳を超え、「結局、終わりよければすべて良しだよ、人生なんて」と橋本さん。年金に頼らない人生を歩むなら、せめてしっかりと貯金をしておくべきだったと、いまさらながら後悔を口にしています。

 

[参考資料]

日本年金機構『国民年金保険料の変遷』

厚生労働省『令和5年度の国民年金の加入・保険料納付状況を公表します』

日本年金機構『必要な資格期間が25年から10年に短縮されました』