20歳以上60歳未満のすべての国民には、「国民年金保険料」の納付が義務づけられています。会社員の場合、給与から天引きされるため気にならない人も多いかもしれませんが、自営業の人などは納付のお知らせが届きます。なかには、安易な気持ちで未納にする人もいるようですが、滞納を続けていると本人だけでなく、家族を巻き込んで大変な事態に陥りかねないと、牧野FP事務所の牧野寿和CFPはいいます。70代夫婦と30代息子の事例をもとに、国民年金の仕組みと注意点についてみていきましょう。
俺たち関係ないだろ?…年金月33万円・72歳おしどり夫婦を戦慄させた一通の督促状。元凶は、36歳“出戻り息子”宛てに年金機構から届いた「赤い封筒」【CFPの助言】
「国民年金保険料」の仕組み
電話をかけると、Aさんの動揺を感じ取り「早く解決したほうがいい」と判断したFPは、すぐに対面での面談を組んでくれました。
Aさんは困惑した表情で、次のように言います。
「私はずっと会社勤めだったもんですから、年金のことは明るくなくて……。なぜこんな封筒が届いたのかもよくわかりませんし、会社員なら本人の給与から天引きされて、妻の保険料負担もありませんでした。なぜ国民年金では、本人になにかあったときに親が肩代わりしなくちゃならんのか、納得できません」。そこで筆者はまず、Cさんが加入している国民年金について説明することにしました。
まず、会社員であっても自営業であっても、20歳以上60歳未満のすべての国民は、国民年金の加入が義務づけられています。職業や状況によって、次の3タイプいずれかに分類されます。
■第1号被保険者……第2、3号被保険者でない自営業者や農業者、学生、無職などの者。原則65歳からは、老齢基礎年金を受給する。
■第2号被保険者……70歳未満の会社員や公務員など、厚生年金に加入している者。厚生年金保険料を、給与から天引きされる形で納付する。厚生年金加入者は同時に国民年金の加入者にもなっているため、65歳から受給する老齢厚生年金には、老齢基礎年金も含まれる。
■第3号被保険者……第2号被保険者に扶養される、20歳以上60歳未満の配偶者。第3号被保険者でいるあいだは、国民年金保険料を納付する必要がなく、「保険料納付済期間」として65歳以降受給する老齢基礎年金の年金額に反映される。
Aさんは会社員だったため「第2号被保険者」、配偶者であるBさんは「第3号被保険者」です。Cさんは独立して自営業となったため、上記のうち「第1号被保険者」にあてはまります。第1号被保険者が納める国民年金保険料は、本人(Cさん)または保険料連帯納付義務者の世帯主(Aさん)・配偶者が納めることになっています。なお、AさんがCさんの保険料を納付した場合、確定申告で所得控除を受けることが可能です。
ここまで説明したところで、CさんからAさんのもとに「家に帰った」と連絡があったため、この日はいったん帰宅されました。