離婚前から“母子家庭”状態が続いていた池崎さん(仮名)。昨今の物価高も相まって、母子家庭は経済的に厳しい状況に置かれています。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事である今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より、実際の事例とともにひとり親家庭の厳しい実態をみていきましょう。
誕生日プレゼントは“100均のおもちゃ”、それでもわが子は「これ高いね、こっちがいいね」…手取り月19万円、シングルマザーの悲鳴【インタビュー】 (※写真はイメージです/PIXTA)

もし少しお金に余裕ができたら…池崎さんが描く未来

―最近は食費や光熱費も上がっていますね。

 

色々切り詰めようと思っても、なかなか難しいですね。ちょっと暑いぐらいだったら扇風機だけで、窓を開けて。エアコンはつけないで。

 

スーパーでも割引のシールが貼ってあるものを探して買っています。二人とも果物が好きなんですけど、見切り品のバナナが50円とかで売ってたら買ったりします。高かったら今日はあきらめようって。

 

普通のレストランとかでは食べることがないですね。子どもたちはファストフードが好きなので、たまに買うぐらいです。ハンバーガーとポテトとジュースのセットを一人分買って、単品のハンバーガーをもう一つ買って。ジュースとポテトは二人で半分ずつ。私まで食べると1,000円を超えてしまうので我慢します。

 

―もし少しお金に余裕ができたら何に使いたいですか。

 

前は誕生日のプレゼントで百均のおもちゃとかを買っていたんですけど、長男は自転車がほしいみたいで。でも高いですよね。もう3年も待たせています。

 

体もどんどん大きくなってきているので、服とか靴も。服は支援などでいただけることもあるんですけど、靴はなかなか難しくて。

 

―貯金をされたりもしていますか。

 

ちょっとずつですね。今は自分しかいないので、「もし自分が倒れたら」というのは常に不安に思っています。すごく怖いです。

 

二人がどんどん大きくなっていったら教育費もかかるだろうし、お金がないから行きたい学校を我慢するというのは絶対にさせたくないので。

 

年齢的な不安もあります。「いつまで働けるのかな」と思ったり。下の子が成人する前に私が定年を迎えてしまうので、そこからまた収入が落ちたらどうすればいいのかなって。

 

―出費の中では家賃が一番大きいでしょうか。

 

そうですね。実は持ち家なんです。主人と結婚したあとに「マンションを買わないと離婚する」みたいに言われて、そのとき私が持っていた全財産を注ぎ込んで買ったんです。保険も全部解約して、私の親が残したお金も全部使って。

 

マンションが売れたらいいんですけど、音信不通の彼と共同の名義になっているので、手続きができていません。本当は市営住宅とかに移りたいんです。それで食費とかにもう少し回せるようになるといいんですけど、それが今はできない状態なのもきついですね。

 

家だけが良くて、でも実際の中身は全然整っていない。子どもに自転車も買ってやれない。なんでこんなことになったのかな、って思ったり。すごくしんどいなって。すみません、泣いてしまって……。

 

※インタビュイーのプライバシーに配慮して名前は仮名とし、一部の情報に加工を施している。

 

 

今井 悠介
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン
代表理事