離婚前から“母子家庭”状態が続いていた池崎さん(仮名)。昨今の物価高も相まって、母子家庭は経済的に厳しい状況に置かれています。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事である今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より、実際の事例とともにひとり親家庭の厳しい実態をみていきましょう。
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テレビで見るのが好きだから…肌で感じる子どもたちの「遠慮」

―子どもたちから「こんなことをやってみたい」と言われたことはありますか。

 

我慢してるのかなと思います。学校からサッカーとか野球のチームのチラシが配られるんですけど、「やりたい?」と聞くと、「いいよ、やりたくない」って言うんです。「テレビで見るのが好きだから」って。チラシに料金も書いてあるので、それが理由かなと思ったり。

 

二人とも勉強は苦手だけど、体を動かすことは好きなので、スポーツをやったらきっといいんだろうなと思います。クラスでやっている子もいるみたいです。

 

イオンに行くとキャンプのテントが売っていて、すごくやりたいのがわかるんです。わーってテンションが上がって、テントの中に入ったりして。でも「キャンプに行きたい」とは言わないです。買い物に行っても、「これ高いね、こっちがいいね」とか言ったり。

 

何かほしいものがあったとしても、まず母親がどう思うかなというのを先に考えて、その範囲で言ってくるようなところがあります。子どもらしくないというか。

 

―キャンプに行ったり遠出したりという経験はほとんどないですか。

 

ないですね。旅行もまったく行っていないです。長男が学校の行事で山の学校に行ったぐらいです。

 

元々私は他県の出身なんですけど、両親は結婚前に他界しているので、息子たちにとっては「田舎に行く」という機会もなくて。田舎暮らしとか、キャンプとか、そういう体験をさせてあげられていません。

 

お友達に頼んで行けたりすればいいんですけど、必死で仕事をしているとママ友をつくる余裕もなかったり……。

 

キャンプ場とか、父親を交えて家族で何かするような場所を避けている部分もあります。離婚の前に乗っていたのと同じ色の車を見ると、子どもたちが「あ、パパの車だ!」って言って手を振ったこともありました。

 

―池崎さんご自身は子ども時代に何か習い事などされていましたか。

 

小学校低学年までピアノをちょっとだけ。あとは4年生ぐらいから塾に。

 

両親は共働きで商店をしていて、時間的な余裕がなかったです。学校のあとに近所の親切なおじいちゃんおばあちゃんのところに行って、晩御飯を食べさせてもらったり。

 

私の両親は仕事が忙しく学校の行事に来れなくて寂しい思いもしたので、私は運動会とか参観日には必ず参加しています。それで仕事がやりにくくなったり、限られたりもするんですけどね。