「あなた友達だったじゃん」という悲しさと恨み

――「『源氏の物語』を恨んでおりますの」

あのシーンは悩みましたね。やっぱりプライドがしっかりあるキャラクターだと思うんですよね、ききょうというのは。それを見せないというか、強がっているけれども、常に自分は負けないようなポジションを探す人間だと思っていたのが、台本がきたときに「腹が立っている」「恨んでいる」というのを「言うんだ!」っていうふうに思って。

(C)NHK
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思ってても「ふん」「へえ~」みたいな感じで強がるのかなと思いきや、ぶつけるっていうのはやはり相当本人も覚悟がいっただろうし、カッとなっていったというよりかは、これは私だけの解釈だと思うんですけれど、やっぱり悲しさがあったと思うんです。「友だちじゃなかったの?」っていう悲しさ。「あんなにしゃべっていて、私、定子様のことをあんなに好きって言って、そのために書いているっていう話も散々していたのに、なんでそんなことするの?」っていういらだち。

裏切られたと思っているので、裏切られたときの悲しさっていうのがあったんだと思って、私はそこが強く恨んでいるっていうのは、定子様への思いからの恨みもあるし、「あなた友達だったじゃん」っていう恨みが合わさって、愛憎みたいな感覚になってしまいました(笑)

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友情を丁寧に丁寧に編み込んでいった先に…

――まひろとききょうの関係

歴史的に見たときにライバル視されるような位置関係になっているからこそ、最初、近づけておくっていう。この手腕に本当に脱帽というか、そのほうがやっぱり悲しいし悔しいと思うんですよね。これはもう悪口書かれる道が決まっちゃっているから。だからこそ今まで第三十八回に至るまでなんども赴いて二人の絆というか、友情を丁寧に丁寧に編み込んでいったと思うんですよね。そこのほどける瞬間、ギュっと結ばれた糸たちがパツンって切られる瞬間がすごくリアルだなって。この女同士の友情の中の糸がほつれていく感じというが本当にリアル。「リアルだな」と思って、「嫌だな」って思いました。シンプルに嫌ですね。

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