かまどで炊いたようなごはんやプロ級ローストビーフ……。調理家電の進化によってさまざまな料理が、簡単においしく作れるようになっています。中でも私たちにとってうれしいアップデートを重ねているアイテムの一つが、ミキサー。家庭にあるかないかで食卓に大きな違いが出てくる存在でもあります。振り返ってみると、10年以上前にスムージーブームとともに海外製の超高級ミキサーが流行した時代があり、“おいしいジュースを作るためには10万円以上する特別なミキサーが必要”という印象が定着していました。ところが最近では機能性の幅を広げながら、家庭での使いこなしやすさや美しいデザイン、リーズナブルな価格が重視され、わくわくするような新製品が続々生まれてきています。そこで今回は、専門店のようなジュースを自宅でも簡単に作ることができる最新ミキサーをご紹介しながら、それらを実現させている技術進化に注目をしていきたいと思います。
野菜や果物は賢く選んで摂取する時代へ。「ジュース」にまつわる最新技術とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

3年7ヶ月の歳月をかけてたどり着いたミキサー刃の設置角度…斜め型ミキサー

<TIGEREDGE>SLB-A100(タイガー魔法瓶株式会社提供、以下同)
<TIGEREDGE>SLB-A100(タイガー魔法瓶株式会社提供、以下同)

 

続いては、国内メーカーであるタイガー魔法瓶が2024年7月に発売した「斜め型ミキサー<TIGEREDGE>SLB-A100」。同社は、真空断熱や熱コントロールによる高次元の熱制御技術において世界的に評価されているメーカーです。

 

ポイントは、国内初となる“ミキサー刃の設置角度が斜め型45度”であるという点。確かに従来の大半ミキサーを見てみると、刃が水平に設置されています。

 

刃の設置角度が45度になっている。(※氷のみでの使用はできません。氷は3cm角以上のものを入れると故障の原因になります。)
刃の設置角度が45度になっている。(※氷のみでの使用はできません。氷は3cm角以上のものを入れると故障の原因になります。)

 

ミキサーの切削力を高めるために、「この角度が本当にベストなのか」という点に着目。開発開始から約3年7ヶ月、127台を超える試作品を作成し、カップ形状や刃の設置角度や刃の折り曲げ角度の調整を何度も繰り返してミキサーの新角度45度にたどり着いたそうです。この設計技術によって、リンゴやアボカドも丸ごと砕く(※)強力な切削力だけでなく、斜めの構造だからこそ実現した上下に巻き込む3種の水流(低速逆流・低速水流・高速水流)によって攪拌しにくかった葉物野菜なども均一に仕上がるように。回転速度は10段階で調整可能になっています。

 

また、高さを抑えたローフォルムやコードリール、カップが手前にスライドする設計を実現することにより、高機能でありながらもスマートなデザインを実現。本製品は北米販売モデルにおいて、世界で最も権威のあるデザイン賞「iFDESIGNAWARD」を受賞しています。

 

※りんごは芯と種を取り除いてご使用ください。
※アボカドは半分に割って種をとり、皮をむいてご使用ください。

 

食材を丸ごと投入できる独自テクノロジー搭載!憧れのスロージュースが作れる最新機器

ヒューロムスロージューサーH70ST(HUROM株式会社提供)
ヒューロムスロージューサーH70ST(HUROM株式会社提供)

 

最後は、ヘルスコンシャスな人々を中心に海外でも広く愛されているジューサーのご紹介。食材の味・香り・栄養を余すことなく絞られる「スロージュース(コールドプレス)」を家庭で簡単に作ることができる、韓国のジューサー専門メーカーが新たに生み出した「ヒューロムスロージューサーH70ST」です。

 

スロージュースとは、別名コールドプレスジュースとも言われ、野菜や果物に熱をかけずにゆっくりと圧縮して搾ったジュースのこと。カッターが高速回転するミキサーでは発生する熱や空気混入によって繊細な栄養素の多くが損なわれてしまいますが、スロージュースはそれらの弱点を解決。同社のジューサーは、食材にかかるストレスや熱を最小限に抑えてゆっくりしっかりと搾汁。熱に弱い酵素やビタミンC等も壊さずに抽出することができ、空気の混入も少ないため食材の酸化も抑えることができます。

 

メガホッパーとオートカットテクノロジーによって、食材を丸ごと入れてもシルキーな食感のジュースが搾汁できる。
メガホッパーとオートカットテクノロジーによって、食材を丸ごと入れてもシルキーな食感のジュースが搾汁できる。

 

2024年5月に登場したのが、独自技術による高い搾汁機能を搭載した、スリムでミニマルなデザインが魅力の新製品。ポイントは、食材を丸ごと投入できる独自テクノロジーを駆使して開発された「メガホッパー」と「オートカットテクノロジー」にあります。

 

例えばリンゴ、オレンジ、トマトを切らずに丸ごと入れてしまえば、食材を自動的にカットして搾汁するシステムにより一気に搾汁されるのです。また、ミキサーのような鋭利な刃が一切ないため、搾汁中でも追加の投入口から安心して材料を入れることができます。

 

一度スロージュースを飲めば、新鮮な野菜や果物をそのまま食べているような、それでいてシルキーな食感や奥深い濃厚さに感動すること間違いなし。栄養吸収に注目したジューサーとして、他のミキサーにはない大きな強みを持っていると断言できます。

何を重視する?多種多様な進化を遂げているジューサー

ジューサーの世界は、ユーザーのニーズによって多種多様な進化を遂げています。自分の生活シーンにぴったり馴染む製品を見つけてみるのも楽しいはず。さあ、みなさんは何を重視して選びますか?

 

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<著者>

スギアカツキ

食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。